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平田栄一求道俳句1990年全作品  

1990年12月

失速する夏の夜の指紋乱れる

離人症の足に吸い付く夏のスリッパ

するめかみかみかみがわからぬ

娑婆の縁尽きた所蝶が生まれる

話遮って点けたライターの長い火

天をつかみかけて事切れた手

捨て置け捨て置け神が拾う

1990.11

辞書から抜け出た言葉の柔な生態

息をひそめた森が風の言葉を語る

折れちまったクレヨン 風の絵を

君のボルテージを上げて時に抗え

そっとうなじに触れ夜風が昇華する

1990.10

髑髏と核搭載タイムカプセル深く埋め

捨て置け 神が拾う

不発弾眠る杜の蝉しぐれ

陽を飲み込んだダリア 黙示録閉じる

麦鳴る地平に馬がいななく

昨夜の愛褪せ朝の微熱だ

口笛軽やかに少年の抱く鳩の温もり

1990.09

陽へくしゃみし己が生き様を嗤う

爆音パラパラ秋の陽が散る

世紀末かじる金喰い虫の歯音

更なノートの少女幾度の恋に破れ

気弱な月が刃色の線路をまたぐ

ためらいが胸にのしかかる青い稲妻

1990.08

白い花散る振り向かずに別れて行く

来ない女を待つブラック一杯分の夕陽

嵐呼びそうな雲の流れ逢いに行く

薄陽さす廃屋に木と人の匂い

誰もいない部屋にせめて花飾りたい秋

1990.07

進化論の神恋し人間空に穴あけた

春の旅の鞄軽く小さな本屋に立ち寄ったり

手指死人のように組み雨の夜の何思う事のない平安

雫となって春告げる雨に少女密かな決意もつ

花散らす雨が一日夕暮れの長いサイレン

燕が軒を掠めたり海辺の宿の明るい朝

1990.06

暮れ残る草匂う夏のどこかで捨て猫の鳴く

春の灯を消して月影柔らかなカーテンの襞

異性の噂にどっと沸いたり卒業近い春の日

1990.05

辛夷灯るように咲いて静かな始発の入線

手指死人のように組み夜の雨安らかに聞く

一徹だった父の靴のかかとの減り様

霧雨の傘深くさしかけて身重な妻の歩に合わす

淡雪窓に溶けてゆく膝の児の乳の匂い

詮ない話と背で聞いて暖にかざす手の裏表

捨て猫らしい声遠のいてゆく街の黄昏深くなる

茜色の空を背に人を待つ影折れて佇つ

1990.04

林檎ほのかに匂う部屋の恋文めいた妻の伝言

病室にともす早い灯へ蜉蝣の命透けている

聖夜の妻の吹き消したキャンドルつと匂う

人と折り合えぬ性悲し街に聖夜近づく

サイレン遠くカマドウマのじっと動かぬ寒い灯

1990.03

一日笑わぬ顔こそばゆく我がデスマスクを想う

背広てれりと吊し寝そべって聞く妻の繰り言

手相見にもう客がいて浅草仲見世師走の朝

夜霧に街の灯色褪せ諍い後の淋しさ

地味に髪まとめて厨の少し不機嫌な水音

残月淡くて昨夜愛確かめた手の少し汗ばんでいる

きゃしゃな背丸めて夜なべする妻は教師

1990.02

母の帰りを待ちわびていた子の冷たい手

小春日に野辺送る喪服の樟脳が匂う

秋雨に濡れてきて仕事の愚痴になった酒

煮物匂う夕暮れをバイク好きな青年寡黙

句作即ち祈りとなれ抱壷思う秋の夜

1990.01

晩秋の駅頭急ぐ人人の後ろ姿皆やさしい

寝込む程でもない風邪が長引き仕事ややマンネリ

見送る母のまなざしを背に言いそびれたこと

月明かりの別れ道君の気持ちを確かめたい

異人街炎昼 当てレコの景色が動く

ダリア咲き盛りひねもす女ピアノ弾く
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コメント

「求道記」の句

>不発弾眠る杜の蝉しぐれ  1990.10

代表句の一つ。これは写生句といってよい。実家が檀家になっている寺の庭に、不発弾がささっていたのだった。http://www.d6.dion.ne.jp/~hirata5/kyudo.htm

余白 #oBO5MkqQ | URL
2006/01/16 13:47 | edit

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