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第1章 師イエスの故郷・ナザレの村(移転中)  

●風土と精神形成
水と緑に恵まれた牧歌的、田園的風土に育ったということが、後の師の教えに極めて大きな影響を与えたということは、否定しえない事実として受けとめられるべきであろう。(21頁)

イエスの神観――アッバ神学を語るに当たり、井上神父が非常に重視しているのが、精神形成における自然や「風土」といった文化史的影響。一般に、キリスト教は、ユダヤ教からの延長として、「砂漠の宗教」→厳父の神観をもつと誤解されやすいが、本質は逆に「牧歌的」「田園的」宗教→慈父の神観を土台にしている、と説く。キリスト教が「旧約」の否定、超克の上に成り立つ、というこの著のラディカルな主張を予想させる言葉。


●「旧約聖書」の必要性
キリスト教会は、たんに護教論的な目的だけではなく、迫害を免れようとするためにも、少なくともローマ帝国に対して、自分たちをユダヤ教の傘下にあるものとして見せることが極めて有効だったのではないか。(31頁)

風土的に言っても、ユダヤ教と全く異なるキリスト教が、なぜユダヤ教の厳父的神イメージを持つようになったのか、それが、ユダヤ教正典たる「旧約聖書」のキリスト教会での扱いによる、という。

本来、ユダヤ教の否定・超克の上にたつはずのキリスト教が、「旧約聖書」を手放さなかったのは、田川建三のいう、対ユダヤ教、対ギリシャ・ローマ思想への護教的目的だけでなく、皇帝礼拝を拒否し、新興宗教として迫害されたキリスト教の弁証のためだったと、井上神父は推測する。


●旧約からの脱皮
いかに師イエスの生涯と教えが旧約思想を否定、超克したものであったか・・・・。

師イエスの生涯と教えとは、この峻(けわ)しい、近づき難いユダヤ教の神観の否定と、超克の上にこそ成り立っている。

そこ(シナイ山周辺)にうかがえるものは、暖かく優しく傷ついた人の心を包み込んでくれる、師イエスを育てたような「母なる自然」ではなくて、どこまでも厳しく叱咤激励する「父なる自然」である。
(31,33,36頁)

井上神父が文字どおり、「命を削るような思い」で書き上げた『わが師イエスの生涯』で、第一に強調されているのが、ユダヤ教とキリスト教の決定的なコントラストである。

それは、上の言葉のように、繰り返し語られる。これまでのキリスト教神学では、「新約は旧約の完成」として語られることが多かった。

すなわち、旧約と新約の「連続性」が強調されてきた。この点でまず、井上神学は大きく異なる。それぞれの風土から生み出された神観は、水と油、断絶ともいえるほどの関係に近い。

以前、朝日新聞に「旧約聖書からの脱皮を」と題した井上神父の記事が批判を受けたが、それはおよそ、旧約との連続性・等価性を前提とするキリスト者からの批判であった。

もとより神父は、旧約のすべての言葉が、アプリオリに「不要」と言っているのではない。イエスの思想を直接支持するような言葉も、膨大な旧約の中には散見できる。


 そもそも旧約の「否定」といい、「脱皮」といい、「超克」という場合、元になる思想・神観を前提としなければ、イエスのそれの斬新さを知ることもできないだろう。したがって、本書でも、多く当時のユダヤ教について頁を割いて解説している。

この点で、マリオン主義とは決定的に異なる。だが、旧約全体として根本にある神観が、イエスの神観とは正反対と言えるほど異なるということなのである。
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thread: 聖書・キリスト教

janre: 学問・文化・芸術

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コメント

僕はキリスト教ですが、

僕もこの意見には賛成できます。今の宗教のほとんど聖典とされているものにそのような文化と社会に折り合いをつけている箇所はあると思います。ですので、聖書は完全じゃないと思います。自分の教義を守るにはこの聖書の御言葉はいっていることすべて正しいとさえ言ってしまえば箔がつきますからね。ブッタも尊敬していますが、仏教もしかり同じ文化をたどってしまいましたし。ただすべての聖典が嘘をいっているようには見えませんし、学ぶこともたくさんあります。結局そういうことじゃないですかね。

ナムオ #- | URL
2009/03/14 21:07 | edit

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