「南無アッバ」を生きる ホーム » 連載「井上神父の言葉に出会う」 »4.阿頼耶識・無意識・魂-第19回:無意識の真実-『風』第78号2008年春

4.阿頼耶識・無意識・魂-第19回:無意識の真実-『風』第78号2008年春  

そこでもう少し、右の引用部分の続きを読んでみましょう。

<――もっと具体的に話してください。>

という質問に対して遠藤氏は、クリスマスを例に上げ、イエスがベトレヘムの馬小屋で十二月二五日に生まれたことは、「事実ではない」という多数説を紹介し、次のように述べています。

<しかし、私の場合、その説を認めると同時に、人々がイエスをベトレヘムの馬小屋に生まれさせようと願ったその願いのほうに重きを置くのです。

・・・・それは人間に自らの心の中の馬小屋のようなきたない場所にイエスを探したいという我々のひそかな欲望のあらわれではないでしょうか。

我々の心のなかの馬小屋と同じような汚れた場所
――それは前にも申し上げた阿頼耶識のことではないでしょうか。

阿頼耶識には我々のいまわしい欲望がいっぱいつまっていて、馬糞でよごれ、臭気にみちた無明の世界だからです。

そこに純真な赤ん坊が生まれる、イエスが生まれる。その臭気や無明の場所を浄化してくれる。

その祈りがクリスマス伝説を創りあげたのだと思いますよ。

・・・・魂の願いをあらわすがゆえに、事実を記すより、もっと人間的真実をあらわしています。

だから私は信じるのです。信じるとは知ることと違うのですから。>
(同五四~五五頁)

馬小屋でイエスを生まれさせるという「クリスマス伝説」の根拠が、人々の浄化の「願い」や「欲望」や「祈り」にあり、そういう「魂の願いをあらわすがゆえに」この話は「事実」以上に「真実」をあらわしている、というのです。

そして何より興味深いのは、こうした「我々のひそかな欲望」がつまっている「場所」
――「我々の心のなかの馬小屋と同じような汚れた場所」は、「阿頼耶識」だといっている、ということです。

この本の前の方で遠藤氏は、「神は存在じゃなく、働き」(二二頁)であり、いろいろな「人々」(二六頁)を通して働かれると、体験的に語っています。

その人たちの「大きな働きの集積が心の底」(二七頁)にあり、「時節到来の時」に働き始める。

<それまでその人たちのことはどこに入っているかというと、仏教では阿頼耶識(心の一番奥底の領域)と言っているところです。

キリスト教では魂と言うところです。

深層心理学者はこれを無意識と言っています。>
(同二七頁)

ここでは、いわば〝神の働き手〟となった「人々」のことが、「阿頼耶識」(仏教)=「魂」(キリスト教)=「無意識」(深層心理学)と同定された所に、しまいこまれている、というのです。

さらに、この三者の関係を氏は、「小説を書いていくうちにわかってきた」こととして、次のように述べています。

<・・・・私たちが何か行為をする時には、一つのわかりやすい心理だけによるのではなくて、いろいろな心理が絡み合って一つの行為をしています。

・・・・小説を書いているうちに、無意識ということはだれしも考えざるを得ないなということがわかってきました。

仏教の唯識論では、この無意識を阿頼耶識とよび、実にみごとな分析をしていますが、この無意識の奥にまた何かあるかもしれない、それがキリスト教でいう魂、神の働くところであって、そこが人間の中で一番大切なんだなと、ある時期から考えるようになってきました。

仏が働いたり、キリストが働くのは、意識の世界ではなく、この心の奥底なのだな、働く場所はそこなんだな、と感じてきました。

意識よりも、そこの部分のほうで神や仏は人間をつかむんじゃないかな、と考えるようになったのです。>
(同二八~二九頁)

わたしたちがする「一つの行為」には、「いろいろな心理が絡み合って」おり、そこに無意識が働いているということ。

その「無意識」を「阿頼耶識」とよぶことは、前述のとおりなのですが、ここではさらに、「無意識の奥に」可能性としてある「何か」を想定し、それを「キリスト教でいう魂」としていること、そしてそこが「神の働くところ(場所)」である、といっていることに注目したいと思います。
関連記事


category: 連載「井上神父の言葉に出会う」

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://yohaku5.blog6.fc2.com/tb.php/1095-c89d120b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

日本人にわかるキリスト教を求めて

南無アッバの集い&平田講座

求道詩歌誌「余白の風」

最後の南無アッバミサ

全記事表示リンク

リンク

検索フォーム

▲ Pagetop