「南無アッバ」を生きる ホーム »平田栄一求道詩歌(2)
カテゴリー「平田栄一求道詩歌(2)」の記事一覧

日本人にわかるキリスト教を求めて

26May2012+011_convert_20120623181132_20120623222548.jpg井上洋治神父は、遠藤周作氏と共に、日本人の感性で正直に受けとめられるキリスト教を一生をかけて模索し、1986年「風の家」をはじめました。このサイトでは、「風の家」運動を引き継ぐ平田栄一が「求道俳句」ほか、日本人キリスト者の道を模索する試みを紹介していきます。お問合せ 略歴 著書

「短歌人」10月号評  

wataruさん、歌評ありがとうございます。
http://bungaku-tanka-tankajin.blogspot.com/2010/09/blog-post_29.html

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

他ブログで紹介された詩歌  

御紹介ありがとうございます。
わたくしと病臥の・・・・http://d.hatena.ne.jp/torae173/20100314

ごく薄く・・・・http://kanitachi.exblog.jp/13028985/

生き方の転換・・・・http://ameblo.jp/sho1-1944/entry-10470202767.html

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 短歌

janre: 小説・文学

tb: 0   cm: 0

「短歌人」2010年1月号  

汚損した本は現物弁済と律儀に迫る図書館パート

娘がいればきっと美人に違いない女の話じっと聴いてる

去勢したタマを今日からミカちゃんと父は呼ぶなり万年床に

母と娘のカップル男女を凌ぎおり雨の月曜サンマルクカフェ

十二使徒の名を得意気に諳んじし友は京都の宮大工となる

眠られぬ夜には池田晶子がいい美人もすなるその哲学を

(小池光選)

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 短歌

janre: 小説・文学

tb: 0   cm: 3

2008年4月以降の俳句は  

順次、余白の風に掲載していきます。

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 求道俳句

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

2008年3月発表作品  

「麦」より

広場に座して
ルカ7・31-35

虎落笛聞きて遊行の道遥か

御言葉を蒔く
ルカ8・4-15

首筋の齢隠せず秋彼岸

十二人の旅
ルカ9・1-6

青き踏む回峰行の気分もて

ヘロデ、イエスに会いたがる
ルカ9・7-9

彼岸明け道よぎる犬と目の合うて

天使ら昇降する
ヨハネ1・47-51

明け切らぬ御堂に灯しミカエル祭

アッバミサ
幼子に示す知恵
ルカ10・17-24

花蕎麦や倒れしままに咲き盛り

からし種一粒ほどの信仰
ルカ17・5-10

宵闇に出口は見えずとも信ず

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

2008年2月発表作品  

「麦」より

迎えに出でよ
マタイ25:1-13

花婿と夜道を下る夏の果て

聖者よ、かまわないでくれ!
ルカ4・31-37

ままならぬことのあれこれ秋の暮

ときに叱り、癒し、そして去る
ルカ4・38-44

白秋の風に溶けたるイエスかな

イエスの弟子とは
ルカ14・25-33

腰すえて日々を担えや秋の雲

悲しみの聖母
ヨハネ19・25-27

人類なら愛せそうです秋を行く

どこまでも探し回る神
ルカ15:1-10

十字架の高きを流る羊雲

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

2008年1月発表作品  

2008年1月 麦
救いへの道のり
申命記10:12-22
二度とかたくなになってはならない。(:16)
マタイ17:22-27
彼らをつまずかせないようにしよう。(:27)

つまずきの石取り去られ盆の道

自分を低くし、子供のようになる人が天国へ入る
マタイ18:1-14

殊のほか静かに暮れしコルベ祭

イエスは、火と分裂をもたらすために来た
ルカ12:49-53

死蝉の吹き寄せられし垣根かな

永遠の命を得るには。。。
マタイ19:16-22

蝉しぐれ天に宝を積む如く

見かけた者は、だれでも招かれる
マタイ22:1-14

末席の気楽さが好き夏の宴

教師はキリスト一人だけ
マタイ23:1-12

ガラシャ忌を一人下山の道辿る

百人隊長の信仰
ルカ7・1-10

仰ぎ見る十字架優し敬老日

若者よ、起きなさい
ルカ7・11-17

復活の予兆あちこち露月の忌

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

麦07・12  

日盛りを御言葉楚々と歩み来る

どくだみに分け入る勇気昭和ゆく

希望というパン賜りぬ夏のミサ

天網に余命を委す法師蝉

よろよろと羽蟻出でたり旅枕

御巣鷹忌人は使命に生くものか

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

「豈」四五号  

求道俳句日記07・7・4~22      平田 栄一

夏期講習マルタマリアと揺れ動く

傷ついた葦にやさしき梅雨の闇

麦の穂のつんつん青きアバの風

主のもとに駆け寄る夢や昼寝醒め

梅雨寒や遠くて近きアバの道

度々の奇跡は見えず五月闇

若くない母娘連れ添う台風一過

台風の針路や如何にろばの旅

講壇に誰の一髪梅雨じめり

朝霧の深き淵より鳩の翔つ

人の子の歩める街や霧深し

夏の雲湧いては四方へ遣わされ

十二使徒送り出すとき梅雨の雷

片陰にイエスの業を覗き見る

病葉の熱の在り処やアバの御手

白靴の平和の使徒や歩み来る

ミサ終えて甘きビールの香りかな

人の幸不幸は問えず道おしえ

ままならぬ世に大輪の虹かかる

ガダラの豚なだれ込みたる夏怒濤



近況:
進退四月から再び定型に傾き「麦」入会。「層雲」自由律及び現代俳句協会退会。

句作「毎日のミサ」による祈りの記録「求道俳句」日記のみに集中。
執筆引き続き連載「井上神父の言葉に出会う」第二部、まもなく通算二〇回を数え、まとめに苦心。他二原稿継続。

主宰誌「余白の風」一三九号まで発行。高齢者向けに縦書きに統一、好評。

(2007/7/22記)

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

麦07.11  

洗礼者聖ヨハネ誕生祭 ルカ1・57-66
寂しさは何の先駆けヨハネ祭

お迎え マタイ8:5-17
御使いを笑みでもてなす木下闇

聖トマ使徒祝日 ヨハネ20:24-29
わだかまり解けて月指すトマの指 

居眠り ルカ9:51-62
狐に穴鳥に巣のある夏夕べ

ヨナが三日三晩 マタイ12・38-42
五月闇大魚の腹の暗さより

聖ヤコブ使徒祝日  マタイ20・20-28
喜々として通える塾やヤコブ祭

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

2007年10月号「麦」掲載作品  

原生林(巻頭)
  ルカ7:36-50
父の日の青い色紙にルカ七章

  マタイ5:38-42
万緑のうちにひと日を賜りぬ

  マタイ5:43-48
わが内に敵味方あり桜桃忌

  マタイ6:24-34
御心のままに野の百合空の鳥

地熱集
  聖バルナバ使徒記念日 マタイ10:7-13
小鞄に夏帽ひとつ使徒の旅

  マタイ5:20-26
和み得ぬ業の深さや梅雨近し

  聖母のみ心の記念日 ルカ2:41-41
不甲斐なき子の行く末や桜桃忌

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

「麦」2007年9月号より  

原生林

夏の雲やがて一つに溶け合うて  栄一

たっぷりと田水張りたる国境

夏来り遠くが見える目のありぬ

病蛍闇は光のためにあり


地熱集

現職の大臣自死す木下闇

拓郎も懐メロとなる晩夏かな

轢死せる猫が見ている涅槃西風

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

「麦」2007年8月号  

原生林

菜の花の黄のまぶしさを哀しめり  栄一

大放屁してから春の床を出る

貪らぬ愛というもの春の川


地熱集

暗くなる灯心囲む夏帽子

満開の桜を抜けて告解す

受難日の厨に粥の湯気満ちて


category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

2007年7月「麦」初出6句  

 地熱集

気ばかりが急く仕事持ち春夕べ

桜蘂降れば易々転生す

気がかりの一、二はあれど鳥雲に


 原生林

満開の桜を抜けて告解す

キリストの傷を洗いし花の雨

神の子のゆるり歩めり春火鉢

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

「豈」四四号  

  命をこえる風  平田栄一

陽はまだある町の小さな歯医者へ急ぐ

命をこえる命が薺に吹く風

春の 向うから来て夏へと抜ける一本道

猫も猫背できちんと座る朝の祈り

どこかで聞いたリズム夜風雨戸を叩く

夏の夜ぼそぼそ親子で解く宿題

桜散り初(そ)め予定欄次々埋まってゆく

入り日傾くほどに石蕗の葉の光り

照れば輝き曇れば悲しい聖母像

桜散ってすぐ白い花の下萌え

疲れ引きずったまま春に背中押される

猫は正しく猫背でひねもす主の膝

田植待つばかりの雨止んで蛙鳴く

別れ言わず別れる君の手の温もり

足元の花に気がつく小さな幸せ

滅多にしない話も出て週末の家族の形

終の別れか今し定刻に発つ列車

部屋片付いて余命いくばくという気分

先々考えまいとする仕事はかどる

かの人の行く末案じやがて本降りとなる




新刊紹介・平田栄一著

『心の琴線に触れるイエス』

――井上洋治神父の言葉に出会う(聖母の騎士社)

 故遠藤周作氏の畏友・井上洋治神父は一九八六年、「日本人の心の琴線にふれる〝イエスの顔〟をさがして、一人でも多くの日本の人たちに、イエスの福音のよろこびを知ってほしい」と願い、「風の家」をはじめました。

筆者はその六年前、一九八〇年に井上神父に出会い、以来ひとかたならずお世話を頂きながら、学んでいる者です。

端的にいえば、井上神父の「境地」とは、『ガラテヤの信徒への手紙』五章一六節による、「風に己れを 委せきって お生きなさい」を生き方のモットーとし、「南無アッバ」という短い一つの祈りを繰り返す――イエスとともに、アッバの風に己を委せきって生きる、まことに単純な境地です。

 本書は、日本人の感性に合ったキリスト教を求めつづけてきた井上洋治神父の言葉を、著者の体験を交えながら、わかりやすく解説した、はじめての井上神学案内です。

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

層雲07年3月号  

退職して家が片付いていく床の間の椿


めったに帰らぬ実家のまずは仏壇に向う


無念無想のあめんぼ水面を飛ぶ


こつこつこなす仕事がある曇り続きの週日


再臨の予兆あちこち芽吹く



category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

層雲07年2月号  


叱った親も叱られた子も哀しくていっしょにいる   栄一



ミサに出そびれ細い雨見ている



今日一日はある思案の行き先



お空の高い所でボクを待っている雲



猫は正しく猫背で座る秋の縁側




category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

2007年1月発表作品  

「層雲」「大江」欄・和久田選5句

ようやく覗いた青空ですぐ暮れちまう   栄一

人ひと日の労苦はある駅前の居酒屋

小さな仕事の実りうれしく手酌でやる

嫌なことは聞きたくないラジオかけ放つ

結論出ないまま秒針なめらかに回る


「層雲自由律」第87号「蒼海集」欄6句

棺桶の底抜けて大海に浸かる

秋影あいまいに蝶が飛び立つ

暮れ残る欅の根元ぐるり虫の音

生協の秋の灯眩しい妻の喪服

眠られぬ夜の闇へ手を合わす

昼から少し陰り弁当買いに出た街が静か


同「創作工房」欄6句

次々家事こなす妻の退職後の幸福

音もなく降られ秋思つのるばかり

水田きのうの雨を孕み豊穣の予感

非公開ブログに日記書く老父の秋

大樹枯れてなお動かぬ信を持つ

昼寝覚め虫の居所に戸惑う

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

「層雲」06-12月号「大江」欄5句  

秋の給湯室で聞くここだけの話   栄一

校舎の屋根から暮れて暮れ残る歓声

明日死のうと思う靴擦れが気になる

心定まらず風に嗤われる

ひねもす曇天の退学審議煮詰まる

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

「層雲」巻頭5句に  

06年11月号 大江欄 和久田選

煙草根元まで吸ってまだ出ない結論

軽い地震があって秋の通夜はじまる

短編ひとつ読み終えて聞く幸福な雨音

ようやく休めた週末の昼酒効いてくる

人を憚る夢を見た明けの明星

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

「層雲自由律」にも5年ぶり復帰  

86号 06年11月 蒼海集 自選6句

念仏が呪文になっていく秋風

粘る唾吐いて真昼の駅頭

縊死の下見に弁当もって出る

もらった本うしろから読む

サンダル履きで君が代うたってる

うす緑色のみどり児笑ってすぐ神様に呼ばれた

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

「豈」第四三号発表作品  

 「層雲」復帰二十句改       平田栄一

一陣の風以上の風が春を引っ張る

無口といって不機嫌なわけでもない目借時

無駄ばかりではない半生仕切り直しの春一番

血は愛より固い絆雌が雄を喰う

嘘ついてこんなに眠い夢の逆襲

昼夜逆転の子を叱り今日もはっきりしない天気

すっかり日が伸びて鍵穴に鍵するりと入る

どこにも落とし所のない話一番星出てきた

黄梅白梅桃の花いずれ良いこともあるさ

殊更寒い冬が過ぎて春が早そう

路地行く影につかず離れずついてくる猫で

この身たまさかと思えば何事も起こるまま

鶯枝から枝へ花こぼし告解の長い列

深山人影霧に溶けやがて沸き上がる声明

勤め上げた妻へ贈る花とて断然赤いのを買う

週末は早寝の枕もとラジオ小さくかけ放つ

春夕暮れ家々のアンテナが十字架

夏野にひとり思考の襞深くする

よく働きよく寝た雀の朝がうれしい

気がかり、それはそれとして初金のミサ




先日、いままでの句を整理してみました。結社・同人誌所属は次の通りです。

旧「層雲」1986.8~92.8(6年)
「層雲自由律」92.9~01.8(9年)
「豈」98.7~(8年)
「海程」02.1~02.9(9ヶ月)
「紫」02.10~05.12(3年)
新「層雲」復帰06.4~

こうしてみますと、旧層雲の方たちとは、あの不幸な分裂があった92.8以来ですから、14年ぶりということになりましょうか。しかし私自身としては、自由律からおよそ離れていたのは、01.8以来ですから、5年弱です。ずいぶん寄り道したなあ、とも思いますが、今はこの間、あちこち見てきて、勉強にもなったなあ、という気持ちでいます。

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

層雲一〇月号大江欄自選4句  

徹夜明けの頭芯そそられる

飛行機雲溶かして夕焼ける

死のまぎわ咲けるだけ咲く

鼻筋通って筋の通らぬ話




category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道句文集(1)  

神を呼び神を疎ましく生きている     1986.08

信仰などいらぬという涼しい目をしている

自由律俳句誌「層雲」に最初に載った二句です。
有季定型だけを俳句とする考えは別としても、自由律から見ても、けっして巧い作品とはいえないでしょう。

しかし、「処女作に著者のすべてがある」とよく言われますが、今この二句を振り返ると、この格言に自ら納得してしまうのです。

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tag: 俳句  キリスト教  聖書  イエス  栄一 
tb: 0   cm: 0

層雲9月号掲載自由律俳句作品  

宿題おわった仕舞湯の細い水音   栄一

捨てそそくさよぎる庭の向うの聖堂

寝坊の子を叱って出た朝のラッシュ

聖書より句集ミサより一人の聖堂が好き

夢も明日もいらないの満ち足りた夕餉

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tag: 聖書  ミサ   
tb: 0   cm: 0

「層雲」8月号掲載5句  

二人の時間が戻る猫がいて花のある生活

訳もなく親が煙たい夕餉の青物

雲まったり流れわが罪を問わず

コンクリのひびから花咲かす神のアイデア

公示日の駅頭傘さす人たたむ人


「層雲」7月号見本


category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

ルカ伝黙想  

「豈」42号(06/3)より   平田栄一

わが内に灯ともし頃や神無月   13:01-09

理由(わけ)聞かず蘆火に誘う人の村 11:5-13

黄泉に聞く励ましありやヒエロニモ 10:13-16

紅葉する木とせぬ木の間花揺れて 12:39-48

雛を抱く鳥の目うるみ暮の秋   13:31ー35

眠られぬ夜も秋の点景とて    12:13-21

捨ててこそ拾う神なりそぞろ寒  13:1-9

秋霖の高鳴りしとき御血受く   11:29-32

使徒来たりまず欅から黄葉す   11:49

思春期の無口極まり十月尽    14:12-14

言霊を孕みて熱しからし種    13:18-21

黄葉に一線画し格納庫      12:49-53

現し身に付かず離れず秋の猫   10:25-37

暮れ易き車道を渡る神の人    11:37-41

霧になる人の面影主の祈り    11:1-4

休耕の畦あいまいに秋桜     12:1-7

寒灯やいよいよ昏き位置定む   11:5-13

眼前の刈田に史的イエスかな   10:1-9

神の指なぞる川辺に曼珠沙華   11:15-26

柿食みて不調をかこつ昼下がり  14:1,7-11

故遠藤周作氏の畏友・井上洋治神父から私が洗礼を受け、神父がキリスト教のインカルチュレーション(日本文化内開化)をめざして「風の家」を設立するまでの五年間―一九八一~八六年―が、受洗前とは違った意味で、私にとって大きな精神的試練の時期だった。

福音の恵みのなかにありながら、様々な迷いの連続――井上神父との出会い以降、私の信仰的歩みは、けっして直線的なものではなかった。

当時の気持ちを思い起こすと、その迷いとはひと言でいえば、頭のなかで勝手に理想化したキリスト(教)者に自分自身が、ほど遠いことに対する煩悶であったように思う。

その最中、俳句に出会った。俳句に接したときの無条件の和みと、キリスト教に対する構え、この対照的な感覚はどこからくるのか、わからないままに『聖書』と『山頭火句集』を交互に読み、また祈る気持ちで自らも実作するようになっていった。

category: 平田栄一求道詩歌(2)

thread: 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など

janre: 学問・文化・芸術

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句全集  

1986.8~2005.5発表全作品
Copyright © 2005 Eiichi Hirata, All rights reserved.

<まえがき>
1981年、遠藤周作氏の畏友・井上洋治神父からカトリックの洗礼を受けました。

その後5年間は、わたしにとって“祈り”の模索期間でした。そして山頭火に出会い、自由律から俳句の道に入ったのでした。

定型が主になった今でも信仰と俳句は、わたしにとって生きるための両輪です。信仰を持たなければ俳句をやろうとはしなかったでしょうし、俳句がなければ信仰を持ち続けることもできなかっただろうと、今しみじみ思います。

これまでキリスト教をテーマにしたエッセイ詩集といったものは何冊か出させていただきましたが、個人句集の出版についてはまったく頭にありませんでした。

しかし、思えば俳句を始めて早20年になります。

このたび『俳句でキリスト教』(サンパウロ)を上梓することになり(5月出版予定)、この節目の年に、やはり一度、自作をまとめておくべきではないのか、と感じるようになりました。

処女句集といえば、選を重ね、できる限り佳句をそろえようとするのが一般的でしょうが、ここではあえて発表してきた全作品を一挙掲載することにしました(逆編年順)。それは、費用負担のないネット句集の強みでもあるのですが、自ら「求道俳句」を提唱する者として、作品のいわゆるデキより、たどたどしくとも正直に求道の跡が透けて見える句集にしたかったからです。

読者のご感想・ご批評をお待ちしております。

この拙い句集から、一人でも俳句やキリスト教、さらに日本人の求道性(スピリチュアリティ)に関心を持ってくださる方が出てくるなら、著者として望外の幸せです。

末筆ながら、これまでわたしの活動をあたたかく見守り、助言と励ましをくださった井上洋治神父をはじめ、信仰と俳句で出会った多くの師友に心より感謝し、お礼申し上げます。

2005年5月 平田栄一

<目次>
2005年  2004年  2003年  2002年  2001年  2000年  1999年  1998年  1997年  1996年  1995年  1994年  1993年  1992年  1991年  1990年  1989年  1988年  1987-86年

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1986~7年発表作品  

1987年12月

力なく握り返す手に言葉が継げない

別れ来て最終列車待つ重さのない時間

時を飲み干した空徳利の四五本

ほろ酔いの下駄引っ掛けて出た夕映え

病み上がりの子に枇杷むく厨のくらい灯

1987.10

人生にも放物線がある 飛雲の緩やかなカーブ

時間切り刻む人間として小さな時計腕にもつ

1987.09

大樹深閑と夏を貫く

死んだ虫の名を尋ねるにあどけなく

何事もなく暮れて静かに街灯抜けゆく車窓

1987.08

埋め尽くせぬ言葉の溝に雲ひとつ浮く

厨春子の病み上がりの好物を煮る

手作りの絵葉書に綴られた新生活の抱負

1987.07

白いコーポ人待つらしいカーテンの灯がもれる

箪笥据えて片付かぬ十年を押し込む

酒盛りする桜のむこうに神の御座

高架線の開通間近に古い町並みが黙る

1987.06

手入れされた庭木の寒々と豪邸の表札

朽ちかけた木塀を背につまみ菜の芽ばえ

とりどりの弁当広げて春めく茣蓙の感触

1987.05

薬飲み残して癒えて小春日の身の軽さ

片言の理屈聞いている親子の長湯

子の熱下がらぬまま二日続きの雪しぐれ

どぶに成り下がった流れを彼岸花咲きつづけ

1987.04

病癒えてゆく夕日の輪郭がやさしい

もみくちゃな新聞のやる瀬なさが転げる終電

かわいた心に甍の痛いほどの小春日

1987.03

陽炎走者の一念に立つ

妻の寝言のはっきりと立ち入れぬ世界をもつ

1987.02

煎餅ほお張りもの言う教え子の言語感覚

それぞれの鳴き声貰うて秋を鳴く

1987.01

童話話す妻の声色古里の母に似る

切り出しにくい話に鉛筆何度も転がる

言い過ぎたあとの傘深くかたむける

軽やかに秋雨の涼陰に抱かれていく

一歩譲る度猫背になってゆく

1986年12月

水鏡に己れを捉えた金魚の顔

メスの下の私を見入るもう一人の私

1986.11

小さな拳が眠った妻の添い寝

ヨブ記繙く雨上りに残る雷鳴

1986.10

患者さんと娘に戻った看護婦さんの休日

よちよち児の歩く岩だたみの紛れもない年輪

1986.09

春昼のブランコ児の肩やわらかな

いとおしき児と聡き妻といて死思うてみる

1986.08

信仰などいらぬという涼しい目をしている

神を呼び神を疎ましく生きている

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 3

平田栄一求道俳句1988年発表作品  

1988年12月

夏の昼下がり蝶の死軽々曳かれていく

祖父の愛した山高帽そっと秋陽に置く

芯熱残る体もて余している秋の夕暮れ

重患に耐えて神の存在疑わぬ淋しい笑顔

秋陽はや傾く店先に無口な鸚鵡が売られている

1988.11

問いただす程口つぐむ子の頑なに揃えた指

差し出した手に温もり残して退めてゆく子

踏み締めた草に濡れて素直な気持ちに還る朝

待っても鳴らぬ電話の人恋しい雨音ばかり

秋の朝靄をカンバスにパステル画風の町並み

芯熱残る朝の梅雨空が重い

1988.10

寄る辺ない夜の灯へ黄金虫舞い込む

雨垂れ傘に重く待ち合わせの刻過ぎている

小さな胸痛むことのあり積み木積んでは崩す

1988.08

古里へ帰る鳥か朝日に真向うて二羽

箸持つ手の重く昨日の疲れ抜け切らぬ朝

夕陽に火照りレモン切る妻の艶めく

墓石一斉に夕日へ向いている花冷え

点滴につながれた命の極みを見つめる

私の命に確かな朝がきている

子を叱った夜の雨軒をたたき続ける

雲染める間の夕陽がとらえた街のスナップ

雨音五線譜にのせ退屈な夜を弾く

1988.05

読み返すことのない日記の十五年の重さ

少し疲れた冬夜のワイン赤い影もつ

妻の箸の椀に触れる音も病み上がり

1988.04

神棲む森に遊んだ少年期の痛む

梢かすかに揺らす黄昏の風のモノローグ

議論めくこともなくなり子を見せにくる友

何もかもうまくゆきそうな月夜の下駄鳴らす

セピア色の頁が風に踊る復古調の夕暮れ

1988.03

熱燗の首つまんで実はと切り出す

雑踏の中の無情な一人として靴鳴らす

花時計花盛り緩やかに季が巡る

1988.02

冬陽が斜めに切り取ってゆく病棟の一日

人気のない時間が夜の深みへ蛇行する街

犬の遠吠えが悲しげな冬空の満天の星

まなこ地を見据えて老犬病んでいる

不治の病人(ひと)見舞った日の妻強く抱く

色褪せた街の釘のような人影

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 2

平田栄一求道俳句1989年全作品  

1989年12月

言葉なく交わる夜のなにげない雨音

花のない夕暮れ暑く黙りがちな心持つ

嘘つけぬ唇にうすくさした紅

1989.11

世に問う理想あり青年ひたすら数式解く

不可解な世に首傾げて死んでいるカラス

吹かれる度止まり直す蝶の一途な生

骨壷いっぱいになって気丈だった亡母

交わりの後の無口な時間の遠く雷鳴を聞く

言った言葉に嘘はない蝉しきりに鳴く

1989.10

落葉がうるさい程舞い病押して勤めに出る朝

父亡くした生徒(こ)が穏やかに語る未来の夢

病む顔火照りどこかで乳飲み子の泣く声

渋滞の尾灯に連なり少し無理した今日の仕事

花びら指で摘んでプラトニックな少女の恋

1989.09

反古にしたい一日の更けて硬い爪切る

微熱ある視線にもの憂い都会の煤けた夕日

出世望まぬ妻に今朝咲いた花の名を問う

秋立つか椅子に引っ掛けた妻のスリップ

1989.08

とりどりの花咲き継ぐ街にサーカスが来ている

恋に恋した頃もあった洗い晒しのTシャツ

黙々と編み棒動かす横顔の妙に他人めく夜

平行線をたどる話の紫煙のゆるやかにのぼる

沈みゆく心を刻デジタルの青い点滅

わずかの酒に酔うて夢語る妻との週末

1989.07

他人事と割り切れぬ長い影引きずっている

春夜のとりとめもない話に食卓の花匂う

妻に憎しみ持つ夜の冷たい足

丸文字几帳面に並べる無口な青春の独白

ハンドル切ったまま雨に濡れてる三輪車

1989.06

妻子のいない休日の募金丁寧に断わる

酔った女の愚痴黙って聞いている猫背な影

春の陽地にあまねく心にとげのない一日

仕事にかまけた一日振り返り今年暖冬

参観日の手高く挙がり交通標語正しく言う

1989.05

茶を入れればどちらともなく恋人に返る冬夜

喪中の悲しい乳房まさぐる寒い夜

数珠つなぎの車横目にちんどん屋が通る

いさかえば妻に味方する子と男同士の約束

性別不明の手袋がはりついている雨の車道

1989.04

不眠の頭を通り過ぎる色のない羊

点滴はずされた母と妻だけの白い部屋

散らばった一日を日記に収めとにかく閉じる

こだわりを捨てたい青春の暴走夕焼け真紅

1989.01

夕陽の絡まる足元から秋色に染まり

煎り豆掌に転がして飲む酒の心に妬み持つ

一生をかけるものがないが口癖の男の長い影

予定のない一日小さな仕事終えて降り続く雨

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1990年全作品  

1990年12月

失速する夏の夜の指紋乱れる

離人症の足に吸い付く夏のスリッパ

するめかみかみかみがわからぬ

娑婆の縁尽きた所蝶が生まれる

話遮って点けたライターの長い火

天をつかみかけて事切れた手

捨て置け捨て置け神が拾う

1990.11

辞書から抜け出た言葉の柔な生態

息をひそめた森が風の言葉を語る

折れちまったクレヨン 風の絵を

君のボルテージを上げて時に抗え

そっとうなじに触れ夜風が昇華する

1990.10

髑髏と核搭載タイムカプセル深く埋め

捨て置け 神が拾う

不発弾眠る杜の蝉しぐれ

陽を飲み込んだダリア 黙示録閉じる

麦鳴る地平に馬がいななく

昨夜の愛褪せ朝の微熱だ

口笛軽やかに少年の抱く鳩の温もり

1990.09

陽へくしゃみし己が生き様を嗤う

爆音パラパラ秋の陽が散る

世紀末かじる金喰い虫の歯音

更なノートの少女幾度の恋に破れ

気弱な月が刃色の線路をまたぐ

ためらいが胸にのしかかる青い稲妻

1990.08

白い花散る振り向かずに別れて行く

来ない女を待つブラック一杯分の夕陽

嵐呼びそうな雲の流れ逢いに行く

薄陽さす廃屋に木と人の匂い

誰もいない部屋にせめて花飾りたい秋

1990.07

進化論の神恋し人間空に穴あけた

春の旅の鞄軽く小さな本屋に立ち寄ったり

手指死人のように組み雨の夜の何思う事のない平安

雫となって春告げる雨に少女密かな決意もつ

花散らす雨が一日夕暮れの長いサイレン

燕が軒を掠めたり海辺の宿の明るい朝

1990.06

暮れ残る草匂う夏のどこかで捨て猫の鳴く

春の灯を消して月影柔らかなカーテンの襞

異性の噂にどっと沸いたり卒業近い春の日

1990.05

辛夷灯るように咲いて静かな始発の入線

手指死人のように組み夜の雨安らかに聞く

一徹だった父の靴のかかとの減り様

霧雨の傘深くさしかけて身重な妻の歩に合わす

淡雪窓に溶けてゆく膝の児の乳の匂い

詮ない話と背で聞いて暖にかざす手の裏表

捨て猫らしい声遠のいてゆく街の黄昏深くなる

茜色の空を背に人を待つ影折れて佇つ

1990.04

林檎ほのかに匂う部屋の恋文めいた妻の伝言

病室にともす早い灯へ蜉蝣の命透けている

聖夜の妻の吹き消したキャンドルつと匂う

人と折り合えぬ性悲し街に聖夜近づく

サイレン遠くカマドウマのじっと動かぬ寒い灯

1990.03

一日笑わぬ顔こそばゆく我がデスマスクを想う

背広てれりと吊し寝そべって聞く妻の繰り言

手相見にもう客がいて浅草仲見世師走の朝

夜霧に街の灯色褪せ諍い後の淋しさ

地味に髪まとめて厨の少し不機嫌な水音

残月淡くて昨夜愛確かめた手の少し汗ばんでいる

きゃしゃな背丸めて夜なべする妻は教師

1990.02

母の帰りを待ちわびていた子の冷たい手

小春日に野辺送る喪服の樟脳が匂う

秋雨に濡れてきて仕事の愚痴になった酒

煮物匂う夕暮れをバイク好きな青年寡黙

句作即ち祈りとなれ抱壷思う秋の夜

1990.01

晩秋の駅頭急ぐ人人の後ろ姿皆やさしい

寝込む程でもない風邪が長引き仕事ややマンネリ

見送る母のまなざしを背に言いそびれたこと

月明かりの別れ道君の気持ちを確かめたい

異人街炎昼 当てレコの景色が動く

ダリア咲き盛りひねもす女ピアノ弾く

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 1

平田栄一求道俳句1991年全作品  

1991年12月

なんでもそろってなにかと不自由

風鈴自在に朝の水中感覚

風に惑う朝の欲情

回廊の暗がりへ一族解体する

1991.11

午前零時の愛は分裂症的かもしれない

泊り明けの欲情炎天を帰る

陵に立つ稲妻 倭人の乳房揺れ

夜半通り雨 自画の森駆け抜け

精液の温もり程には愛の真実

月を射程に入れ非核都市のパラボラ

黙示録読み継ぐ放射能半減期

未定稿溜まる夜毎白い夢

返り血浴びて受験子花に埋もれ

聖夜言の葉降る S町某所にて

春に死す花のアンビヴァレンス

耳底へ降りてきた中年の足音

月満ちるとき花は花を忘れて咲く

中也の、ボードレールの夕陽から鳴呼一歩

春、カスタネットの口が蛇を噛む

酔客マンホールへ電気時計無音

1991.10

亡父の書棚ひそと原色人体図鑑

文学する月の体温掌にのせ

美醜あたためあたため雲と化す

私を遠巻きにして夜の蟻

君と噛むレモン 天地を引き入れ

クルス抱く無名氏に憧れてしまう

胡桃割る情死を月が予感する

無菌室に桜咲く夜の絶唱

昼酒のきくに任せて墓を掘る

身篭った女と、男の夜の死角

春歪む手擦れた遺書の膨張率

耳ある壁に吊す花の磔刑図

詩写三昧欠勤つづく参謀長

月夜の海体内時計遅れがち

モンタージュの顔ビルに密生する

アバ霊(たま)よ街から街を吹き抜ける

1991.09

原書重く夏型思考回帰する

背を丸め大正生まれの父である

春一番その日ヌードポスター豹変す

雲ひと日動かぬ地の狂人と化す

繚乱の街に神父ぬるい血を吐く

夕べ雲焼く空へ憎しみの緒を解く

蛇がのたうつ初夏のてのひら

時が満ちてくる地平線の初穂

1991.08

人間礼讃カナの遺書風に舞い

めくるめく夏失楽園の我が生業

ポストの隙間から我が家を覗く

風、子を叩く父を破門する

春雷の行間に神遊ぶ

春しぐれ 鉄錆に酔う

1991.07

言葉のバベル ファジー論持てはやす

朝、行きずりの葬列に微笑がある

陶器片、風すさぶ地のその昔

菜の花発光 細密描く手が震え

行き倒れてどぶの星空怒涛

ティシュ抜く一枚の饒舌な夜

ルーチンはねた短日に斜線

1991.06

未決囚が笑う月夜のオカリナ

ティッシュ抜く一枚の奔放な夜

ふやけた朝の二十四時間ショップ

轟々父焼かれる日の振る舞い酒

卑弥呼伝説 要塞に鳩を置く

冬帽吊す天の糸無限

戦禍告げる無言の速報文字

黒い雨苦よもぎ萌えいづる

高圧流れる街のストイックな夜

蛍光灯唸る二日酔いの人体図

A型の自問自答 マリモ浮沈する

二又を西へ東風先駆ける

素粒子の胃の腑の街を棲家とす

神が身投げした不凍湖の夕陽

春夢にレ点打つ魚眼こぼれる

失踪する夏夜の指紋乱れる

花びら舞う道で神隠し

ひと筆書き連ねよ子の振り子

パズルめく冬へ白蛾泳がす

呑んべと下戸が居並ぶ人祖(アダム)の縁

1991.05

稲妻射す街の塑型 鳥の首がのびる

冬ざれの白い陽へ吹く変調ラッパ

聖夜をはみ出たマリオの肢体

書き上げた右手の寒さ煙草を切らす

自画いりませんか捨て場さがしてる

毅然と夜のしじまの白い球体

1991.04

過労死認定セズ花曇リノ朝ノ常夜灯

風の死角で草笛吹くとき眩暈

人焼く匂い憶え霧の貨車失踪

神への不信きしきし風笑う

子を連れた女が訪うキリストの系図

1991.03

一日を細切れにして夕べ不整脈打つ

轢死体そのまま冬の街を結紮する

薬の匂い沁みついた父の軍属談

反古焼く匂い鼻にし朝の決意ゆらめく

心の定点越えそう乾いたマッチ擦る

十三階のしじま留守録ビデオ廻り出す

1991.02

失業中きのうと同じカーテンの位置

仮面脱いだ二十五時の客

解読不能幾何学の街並閉じたまま

無口な女の酒匂う鬼の館という店

へのへのもへじが黙殺した風の証言

闇からくわえてきた春の体臭

1991.01

過不足なく働き、何か足りない

告白に揺れる鳥のいない鳥篭

約めた生がガラス透かす蝶の標本

父を呪った日から詩が生まれる

不埒な影が月の負圧に閉じた耳

地下室凍結卵ねむる 脚本ページ白い

カードにのびた触角が明日を占う

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1992年全作品  

1992年12月

発狂寸前夕日が落ちた

1992.11

人影北へ伸び対称形が崩れていく

どこまで続く0を、塗り潰して朝

落日の南風 星をねんごろに抱く

ぐるぐる巻きの包帯オブジェ朝を待つ

散文的朝、韻文的夜

1992.10

墓穴に毛髪ひかる教皇無謬説

投下時刻 風鈴じっと耐えている

覆面党員に冬 金平は甘く煮る

陣痛遠のく百日紅に長い落日

乳飲み子が遠目に見ている磔刑図

愛しきコトバ積み上げバベルの塔

不随筋ヒキツリ朱イ都会(まち)を往く

剛毛が貼りつく倒立の絵鏡かな

拡散する闇へ螺旋階段昇り詰め

インシュリン注す暗い血管花暦

月 等身の影を踏む

始祖鳥飛ぶ交差点イエス振り向く

1992.09

棺桶のなか目覚し時計鳴り止まず

舌点々地に蒔きゴルゴダの朝無風

酸性雨の街ナデシコばかりが繁茂する

月は朧に吾が遺影を抱く

稲妻射す茶室のこけし金縛り

ネオン反芻し都会が肥えてゆく

墓原にて愛語つぶやく胎教

国人の背信身ぐるみ海に捨て

槌音返す真昼野 神失う

人柱が細る都会(まち)の酸性雨

春夜首つりのコード物色する

家系図を背負(しょ)い祖父(イワン)さすらう

1992.08

比較級 女と五感は埒外に

脳死の血流処女地へ迂回する

列に割り込むトラック演歌にノッテル

人はかならず死ぬもの 指のささくれ気になる

子供預けて出た二人に街の灯艶めく

匿名の主人絶えて鳥孕む

利き耳立ててる街路樹 人間不信

霧に倦む樹海 蝸牛の絶唱

聞かざる耳 都市に息づく

第三惑星絶対0度へ旅立つ

汐の匂い纏うて同胞(はらから)を背負(しょ)う

後向きの暴走ニッポンジン

咽頭痛 ミサイル酸性雲をくぐる

1992.07

短命だった友へ長い弔辞

光年を飛ぶパルス旧約の神は宣うや

逃避行こがらし暗夜を先駆ける

斜径45゜テストペーパー彷徨する

VOL1完結無糖無害のウーロン茶

まがい物つかんで下りた夜のとばり

1992.06

鉄扉の軋み澱んだ時間を醒ます

月 背中で祈る

亡父を語る生徒(こ)の膝に置いたかたい拳

失地回復 股間にボレロ感じつつ

病人の匂い纏うて月うるむ

水無川に捨てた髑髏からリラの花

崖下に譜面漂う静かの海

こがらし闇夜を祈りはじめた

六月のキリストの神遊ぼうよ

流竄の霧積む末法工場地帯

星を呑む闇をおずおず神が抱く

コトバ身篭る聖夜 海黙す

左右空席 夜の逃避行

1992.05

死を生きよとドラセナの木が申します

夜は又ひとつの悪事に手を染める

秋、ボールと月の引力見えてくる

淋しい女の顔が長くなる

やすやすと御言葉の沁む雪しんしん

1992.04

積み上げた書類の山へ晒し首

精子揺籃期 朝のトマトまるかじり

屍にからくりはないサタンの弾痕

荒れ野にて母と女が交錯す

月残るインポテンツな朝です

1992.03

草原にギター捨てられ朝の縊死

なにくれとシンドロームの兆し激辛喰う

結氷期間近 俺 声にならぬ遠吠え

終電コトコト自殺願望遠のく

プチブルな夜の構図テーブルを泳ぐ

サタンのおとがい外れて創世紀

テレビ高笑う日本列島まゆごもり

1992.02

病苦の一生燃えつき骨壷の温もり

バッタ片足捨てて江戸川界隈

さるすべり零れる日輪の危うい位置

跛行カマキリ黄昏の死相つかみ来る

冬台風ビル街にα波混入せり

朝、秒針が撫でる国道のゼブラ

鋭角の時を刻み思想歩み寄り

DINKSやもめ足音静かな住人達

天国泥棒 邪な蛇のマニフェスト

煮こごり震え衣裳哲学体感する

幸福の木から萌え出た継母(はは)の手

隠語伝令する神経ニューロン停止

1992.01

花にかざす手 隣人に怯え

いつも遅れてくる青年昭和去く

黄昏に染まりハムレット終幕

相乗りしませんか 夜は長いのです

自画像笑む アンチークな椅子の脚線美

花崩れ 異人街炎昼

黄昏に置くレモン風台風沖へ去り

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 2

平田栄一求道俳句1993年全作品  

1993年12月

夜を徹し母堂の五臓縫い合わさん

母が子を思う想いの末は四次元に

都市百年廃墟の窓からバラ燃やす

中年へずらすベクトル揚羽蝶

神欲す抽象語の山堆く

順路ヒトを定義してゆく科学館

春風と五体ぎしぎし交尾する

三姉妹の髪濡れている交差点

蟻地獄の蟻と遊ぶや歌日記

美少年Aいつから鍵穴を覗く癖

射祷(マントラ)くり返し赤ん坊は空を飛ぶ

それなりに言い分はある死の態(かたち)

キー叩く痴呆の父を羽交い締め

湖へ虚数の蔓延る右脳なり

1993.11

石の悲憤夜に冴える

死と云わず闇と云わず壷中閑

顎骨出土男族何故死に絶えし

宣教師の立つ断頭台を抜ける空

正弦の記憶朧に鳥ら群れ

意を決し第二イザヤに朱を入れる

1993.09

麻酔が効いてきました仕事します

行き倒れてソープランドの逆さ看板

肩幅のモーメントで稼ぐ今日の糧

そっと下りそっと背を見て上がる

カナで聞く老人ホームの位置春景色

野獣一匹棲まわせ薔薇の家

墓へ向う夕景の被写体

黎明の夢永眠の夢の中

1993.07

旅立つ朝の点景として犬の屍

蒼穹から逆しまに立つセミクジラ

校庭に張り詰めた夏の微笑

なだらかに老いてゆく連記式日記

産声以前 たしかに溜息

1993.06

物憂い月 更紙を拾う

古里へ投げた言葉がとどかない

満天の星降る海へ殉教する

白夜を去く柩車花びら踊らせて

西方の風が落した閻魔帳

絹纏いし薔薇の鳴咽や溺死体

花に来る蜘蛛を殺める熱帯夜

風月花鳴呼脛毛を隠す男ども

1993.05

或る事件或る文体を感染する

独房に溢れる夜景の余白

四旬節の月光致死量に充つ

風が吹くオカリナの夢は乳色

銀座三越裏で買う最上の骨壷

書庫に眠る掛時計とロゴスの饗宴

指鉄砲からジョークが消えてる、月

記憶喪失バーコードを読む赤い窓

蝶ひとひら 改札で呑む強心剤

1993.03

母子カプセル メイドイン ホワイトクリスマス

こんぐらがった糸を辿り彼岸に佇つ

一句が最期の糧となる

合わせ鏡の奥の奥 黒蝶睦み合う

微笑隠す象牙店のクリスマス

年々歳々胎児の泪は星の砂

都会(まち)の微粒子を吸い<コギト>の僕

新興地のあいまいな風 蛾もいない

アースに触れた夕日 もう泣かない

無灯火の道 春は流れる

入水する母を見送る羽脱け鶏

西向きの書斎FAX暴れまくる

口ごもる夏の木の葉耳鳴りする

ロマネスクの月裸木に添い寝する

亡者集う茶箪笥の奥の水晶玉

突発性難聴 コトバ遊びはほどほどに

精液を朝湯に流す大晦日

股間にそえた手から地球爆発

宇宙線乱射 荒野へ倒れ込む

カミ訪中 唐変木は寝ています

苺畑に代数幾何が落ちていた

血も花も黙して受けよ風の裸婦

1993.02

訃報聞く朝の冷たい受話器

黄道の尻尾を掴みゴルゴダは芽吹く

神います正造の聖書(ほん)と石三つ

齢(よわい)重ね耳奥に棲みついた処女

肥大都市に赤い妖精うずくまる

十字架上ダビデの命狂い咲き

バイパス駆け抜け蒼い心臓ほくそ笑む

1993.01

夜光虫夜の髭剃って街へ出よう

ビン詰めの恋文の始末に弱り果て

政局見放され等高線をなぞる蟻

錐揉みに蝉の末期 海めくれ

病みほうけた友の童顔

マロニエの株ひび割れて熱ある午後

文字のない聖書(ほん)抱きしめ死者の円居

瀕脈鈍脈たおやかに眩暈

蝶の舞う崖っぷちに佇つ午後三時

現身を厭う蛍光灯の青い影

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 1

平田栄一求道俳句1994年全作品  

1994年12月

いつでも開(あ)いてる図書館のたとえば午前三時の受付け

多作家某は軽い煙草に換えました

1994.11

御声 さやかに響くとき悪霊黙(もだ)す

祈り 仕えるべき命遣わす

福音 時満ちてとりどりの花咲かす

鳩 愛の形で降りてくる

川 先駆ける洗者の波しぶき

召命 網を捨て父を残し湖(うみ)は凪ぐ

四十日四十夜野獣と天使の交響曲

風(プネウマ)この身いただいたものばかり

都市 死んだ金魚はポリ袋で掬う

再開せねば!寒暖計の振れを見た

行季一杯の反古を掘り出す晩年

後頭部に近代化が棲む夏休み

椅子 百年の倦怠を運ぶ

リザーブは四角い顔のハム仲間

ペン/誰だ/歴史を喰ってるのは?

この夏しがみつくものがなければのりきれない

1994.09

都市生活者のどうにも四角い部屋だ

黙って呑んで不機嫌になる

汝と我の掛け合い歴史を刻んでる

捨てたはずのこだわり捨てきれず読みつぐ聖書(ほん)

またもや一日路を遠回り 夕べしずか

しょせんは一行の、人生を請け負う

初蝶はかんたんにめげたりいじけたり

闇/逆手にとる

1994.07

遅れていく時計を朝晩見やる

良い天気だなんでもないドラマを書きたくなった

眉間よせてハナミズキに吹かれている

粋がってここまで あとは流れるまま

よくのんだ あとはせっせいする

どこも痛くない今日の夕日

ランナーの脱け殻新宿某所お立ち台

パイル打つ/葦原まではとどくまい

1994.05

まだ来ない夜の雨音マロウドイン

明日来る約束を一雨毎の暖かさ

今を生きることば父母の恩に報いる詩(うた)

今はばたこうとする夢を追う

ことばよ、もう独り立ちするのか

あと一日は待つ一日が雨

テキストのないまま君を愛せるか

撫で肩の車が流行る逃避行

1994.03

須く黙すべし臨終の脱糞

早期教育のイロハ死に真似から

心中(しんじゅう)の断崖攀る木馬かな

床屋の椅子の上で堕ちる

泣き止まぬ児の背になぞる明朝体

もう決めたから終ったから今を生きる

終電白い山へ腹上死

夜毎あえぐ課長の口に薔薇を詰め

死魚掬う夜店の裏の大男

1994.01

流される流れる葦を見て帰る

陽を欲す向日葵の如夜を喘ぐ

霧深く棲む核家族の白い家

暴走する右脳老いた母と居て

カラオケ棺桶ひらがなの死

治療室から三つ編みにして出てくる

わが墓碑銘を嘆いてばかりはおれぬ

抱き癖ついたバラの始末に弱り果て

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1995年全作品  

1995年12月

幾代の生死を孕む箪笥も僕も

詩の残滓否永遠(とわ)に焦がれる吐息です

1995.11

冷蔵庫はいつも造形的な息を吐く

雷鳴七つ のちの虹 のち広場

雪隠で俺、俺、俺を捻り出す

今夏よく降る我が家に国家に人生に

宇宙時間三時「モシモシ、今何してる?」

神隠し よく売れますね山頭火

1995.10

花絶えし花壇 忘却は罪ですか

屋上にカラス飼うOO外科三丁目九番地

雷鳴神の子人の子山頭火

1995.09

濡れたパンの耳のよう 故郷憎し

露払いの叫び荒れ野に男佇つ

朽ちぬ種蒔いて地球絶対零度

雨垂れが自動書記するイザヤ預言

書を捨てた男ひそかに雲を喰う

真っすぐな道真っすぐ来る山頭火

1995.08

君の道を行け君の星がついてくる

廃屋の壁に指文字 不惑の春を

1995.07

妻の夢に死んで俺復活する

道は何処、列島地下に黄砂降る

荒れ野で叫ぶ東回りの太陽だ

見よ、使者が来るバラバラの私を束ねるため

この世に遣わされたあの世の私です

死出の旅たとえば豆腐の上を往くような

1995.06

砂に埋もれた櫛が公園の日永

点滴夜を刻む生死回帰線

1995.05

荒れ野で滅ぼされる星の大部分

平成の竜頭 震災やらサリンやら

天を梳く火のブラシ 神は傍らに

食中花首(こうべ)を垂れ園芸店の秘話

込入った話に茶の間30Wのジョーク

雲を喰い尽くした植木屋の消息

天地に等身大のネガです原爆忌

便所で風呂場で叙事詩となる

浮浪者が消えた祭 風に読まれている

水がめの水あしたこそは酒になろう

祭壇へ蒼い肉 冬賛歌

陽を抱くカーテンがあり核家族であり

「神」という暗い文字の羅列

祈り続けて詩語になりきれぬ空

雷光 未来図にある記憶

復活する、しない、トランプ微笑

いたく妻ら風船飛ばす世紀末

1995.04

敗戦「てにをは」ひっくり返る五十年

あの世では蝶の欠けらが舞っていた

1995.03

美しい真顔で 空燃える

陽が匂う 凹凸のない記憶

狂人住むゲラサの墓の風涼し

老哲学者の放蕩 狭き門より

万象歳月を巻きつけて眠る

神がいて僕がいて 雲はやさしい

深淵が深淵に叫ぶ 雨の散文詩

屍に立ち現れたる神である

妻が吠える闇の 顔が小さくなる

まずは生きること死体置場はいっぱいです

微熱雨風力5マングローブを越えました

フーコーの振り子を銀河に吊すなど

限りなく微風 君、哲学をやりたまえ

天国の椅子取りゲームの椅子余る

菜の花畑ベートーベンが口開けた

夏至越えてバーコードの誤差縮まりぬ

1995.02

雨、雲、空、少女その性(さが)もてあます

神は沈黙 だから沈黙は愛かも

1995.01

反逆の家 占いと幻の日々つづく

もいだ心臓色づいてくるキッチン時計

夕べ鍵穴から預言者が出てゆく

夜半驟雨どこまでも螺旋階段

爆心へ人参ぶらさげ舞踏会

御声さやかに響くとき黙(もだ)すもの

煉獄篇フライトレコーダセットする

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 1

平田栄一求道俳句1996年全作品  

1996年12月

あくび百万回、のち絶命

予言成就の足音ナザレにて止まる

1996.11

復活の初穂となる旅路の初子いなびかり

博士に先立つ星の、よろめく大地

匿名者ら無名者を訪う夜半

初子捧げて老預言者の安楽死

緊急避難 夢のお告げの成就方

ラマの叫びカタカナ変換間に合わず

1996.10

父は子の、子は大いなるものの先駆けとならん

肉なる神を抱き上げヨゼフのそれから

体内の実は踊る 爆心へ急ぐ女たち

人世人世人世の系図を飛び出す三罪女

神へ向かう命の言(コトバ) 光は闇に勝つ

言(コトバ)は肉となり天から、否 地から恩寵

見た、聞いた、触った、テオフィロは息を呑む

また系図、を端折って神へ行く

マグニフィカト落丁乱丁取り替えます

たなびく香の行方やザカリア黙す

ザカリアの舌解けて流れて「その名はヨハネ

この世に来た光われらを虹色に染め

Fiat mihi 処女って捧げるものかしら

白木を担ぐ女 星空の疎遠

砂漠 預言者は運命を糧とする

てのひらに目のある少女まどろみぬ

1996.09

反省 ぶっちょうづらのまあるい風

よじればきしむほねのなつ

路地裏の花その花のひとつに出会う

残像 昭和のしょうもない話

ふるさと昼火事 水平線に消えた進学塾

ビル街にブーメラン飛ばす円周率割り切れました

1996.08

冷たい血が 嘘をゆるす少女で

裸身に纏う薄明 唇閉じたまま

無垢な鏡に夢魔の肉 花蕊抱き

魔羅太く撫で肩の少年塾通い

彼岸より賜る肉の温みかな

脳味噌も乳房も揺れて夜の河

匿名の祈祷書、「われ渇く」

台風一過尻の辺りに温いもの

双丘の彼方に化石(アンモナイト)手淫する

嫉妬する手脚が伸びる千日参り

交尾なき鳥類深夜徘徊す

肩に花びら紡錘形に眠りたい

弓なりに女店長晩秋失火

義姉 十戒引っ提げ柔らかに舞う

乾坤へ響く咀嚼音 食虫植物の ハレ

バーコードをなぞる指濡れて秋霜

どうしてくれるの あなたのキスで枯れた薔薇

オナン振り向く篝火のためらい

うなじから旅立つ姉妹 聖なる海へ

寝て起きてまた眠くなるスワンの恋

怒る程に朽ちていく身体です

1996.07

自然はいつもニュートラルな笑い 愛

妻のいびき押し寄せてくる白樺林

バラバラな楽章集め中也の春

愛と哀しみの相関 そのXが解けない

ぼくの今きみの今は歴史的現在

さみしいとむやみにねむくなる

1996.06

男は遠くの、女は近くの幻想を見つめる

大いなる混沌(カオス) 土塊(つちくれ)から男と女

1996.05

聖家族はいつ怒鳴ったり叱ったり白い馬小屋

接線の虎落笛 闇と光の

人と人との間 留年中退繰り返す

耳鳴り 物語を紡ぎ出す

鍵が鎖に鎖が鍵に 繋がる冬の推論

玉葱を文学するなんて マルテが嗤う

眼底に熱がある太古の海だ

夜遊びの星が泥山にかかる

1996.04

すげ替えた首転げ落ちもんじゅの知恵

うっかりすれば即破滅型の月よ月

1996.03
あの星この星へ飛ばす瀑布の精子(たま)

腐肉の勝ち誇った嗤いだ

悲しみの詩神(ミューズ)よ、今もアリアは聞こえるか

鋳型へ流す肉の半端である

首吊り研究都市の整然とした迷路である

死を少し吸込み発情する

1996.02

書きかけの遺書 闇の面を女が行く

参三が死んだがむしゃらに句をつくり

1996.01

風訛る

女の欠伸ひとつに呑まれる時間

健康な肋を鳥かすめ 朝ぼらけ

ロザリオつまぐる涙。白い指の

なんの楽器か鳴る 後頭部に鈍痛

エロ本のどれも真面目に悶える顔

耳朶へピアス 嫉妬を噛む

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1997年全作品  

1997年12月

世紀末空席の繰り言

テーブルの向こうに手の届かぬ闇

僕は部屋に、家族は家に、日本は極東に引きこもる

創句の良心 〝一言〟が言いたいばかりに言葉を弄す

だんだんカード化されていく人間

1997.11

踊るシャツやパンツやハカマ言い訳せず

生きがいを失ってじっとゆで卵

書かねば狂気 鳥肌立つ

狂女もだす北斗星流れ

スライダーで来る太陽光の金属音

アツミキヨシが病床洗礼を受けたとさ

地を這い天を仰ぐ蔓に励まされた

少年よ、人生と折り合わねばならぬときが来る

1997.10

煙草くゆらす修道士 千年ジャムを煮る

ベクトル担ぎ明日は何処へ

合わそうとするほど合わない人生の帳尻

1997.09

地球の接線を垂直に生くるタンポポ

貧脈鈍脈風くだる

弱さも神の豊かさカルピスすする

句点読点人生半ばを過ぎた予感

学校 リュックが不正な形で放置されている

ねおきの暗い人生論を立ち上げる

恥の文化も罪の文化も忘れちまった

時代/小学生「昔はよかった・・・」/老人「今が一番!」

お利口ゆえに愛を知らず

1997.08

薔薇食べて考える魔方陣

半ドアの風ぬるくロマネスクの椅子

政治家/はじめに言(ことば)あり/最後まで言だけ

親よりはデキルはずと思う親の愛と悲劇

1997.07

頑なな被写体に波寄せる冬のストーカー

緑青愛でる少女 昼の寺の

首絞める細い指 赤いリボン

煙草の火の落ちる速さで川の闇

飲みかけのグラスに映る顔がない

もつれる舌 人間コピーだった

ティシュひとひらひらひら母娘の息

自律神経ズレル気圧の山から谷

晩鐘のように母の小言を聞く

選ばれた人生か/選び損ねた人生か

1997.06

午前0時の水牛の背に乗る

息子頭を洗い俺首を洗う

1997.05

きのうがころがっているぼうふらのあした

晩祷のように母の小言を聞く

臨死体験ロス疑惑否定する

断食僧の吟行会ふわりふわりゆく

計り謀られる愛 思案橋界隈暗く

化膿する筋書きどおりの春でした

インターネット尼僧から来る離縁状

余計な肉は肉でしっかり生きている

息子よ!「別に・・・・」などという日があるものか

1997.04

早春賦流れる自律神経自立せず

蒼茫たる海へ霊柩車眩し

1997.03

閉じた日常のなかでサイボーグを飼う

風花や母を弔う道傾ぐ

長針が突く花園の無限級数

楔文字歩き出す夜更け腫物が気になる

闇によろけて羽蟻生命線を越える

夕暮れの情死一件ポット鳴く

復活の朝十ニ使徒コーラ一気飲み

天を仰ぎ地を這う蔓や離人症

少年に盗癖ありナルシスの微笑

1997.02

サバイバル万歳を見ている午前二時

馬刀貝やねたみもそねみも釜茹でに

俎はじめ凍結卵をぶった切る

真冬日のマンションに棲む聖マリア

最後の審判 夕日は警告しつづけた

入日ドラゴンの舌に帆を立て

わが領海へタグボート灰色の月を曳く

1997.01

上水浄土にて堕罪オサム掬われる

母というもの 不安を抱きしめ 暖め 糧とする

不信の時代夥しき匿名闊歩する

鳩下る水面きらめく父子の契り固く

汝己れの仕事を為せ カナの水は酒になる

天の子を世の父が探しあぐね一日路

朝まだき町へ村へ福音風(プネウマ)

昔の御力を今に 今もわれら煩い病む

人の子は股から生まれ天から生まれ

信不信 人の子乾坤を昇り降り

三日天下四六時中鳴くガマの家

三男祥吾われは神の小羊なり

荒れ野の試み四十日罪も世も過ぎ行くもの

御使いら昇り降りすべし汲取式便所

権威なき時代権力ひとり闊歩する

影は匿名 踏むがよい

一木に良い実悪い実 いつも隠れて在(いま)す方

闇に光を今日は今日一日を満ちる時

悪に押し出される善もある

わが患いわが罪をわれより知る神の子で

まむしのたうつ水と火の洗礼(バプテスマ)

まともに生きるは難し 世のせいじゃない

ふるさとに生死さ迷う午後一時

ぶどう畑に続編を刈るサマリアの女

エントロピー熱を叱りて母もてなす

ヨルダンへ荒れ野の叫び先駆ける

選び損ねた人生かも十二使徒の寝息

酔いどれ黄金虫 起きよ 手をのばせ

神は人の、人は神の、麦風やまず

傷んだ葦を折らず燻る灯心を消さず寄せくる波

主の食卓にあわれみを喰え罪と病を負う者よ

罪のゆるし 信頼は驚愕と賛美とに

激しき者こそ幸いなり夢の頭寒足熱

王様も百姓も虚栄と嫉妬で身を滅し

一時方向によじれた肢体 枕鳥肌立つ

掴み出す心臓の履歴や世紀末

人ひとの残像重ね透明人間

神は細部に宿る風に紛れぬ不整脈

蛇の恋 女(エヴァ)の口から風(ルーアッハ)

ある朝意志もち初めし金属の鼓動

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1998年全作品  

1998年12月

木漏れ日を抱いてノートの白い煩悶

世の男ども!悶々とするより子に残すうたをうたえ

1998.11

書くよりも書かされたい秋夜長

今日までの、明日からの道を求めて虫の鳴く

美学も哲学もないカラス だからどうした

鈍色の鍵穴から中世を覗く

少しいかれた頭で豊作

共に死ぬ神ゆえ共に生く

野心消える程しあわせ

馬鹿馬鹿しいことの馬鹿にできない効用

1998.10

青葉ざわめく思想小説です

深いゆるし浅いゆるしと波しぶき

問いを投げ掛ける古典/答えを出したがる新刊

破滅型の月を背負って帰途に就く

1998.09

淀む嗤い赤提灯やら風やら

木の影人の影濃くなって八月十五日

朝露したたる早もみじ福音とは気づきかもしれぬ

人生が重いのはラ二ーニャのせいだろうか

人に説けぬ病状あり彼の人のまなざしは

一雨ごと緑濃くなって人間還る

まったく無理せぬ仕事とは如何に炎天下 蟻一匹 彷徨

先が見え過ぎる人生の一寸先は闇

賞賛も肩書もない大の字に寝る

昨日が転がっている今日を蹴飛ばして明日

1998.08

カラス群れなす非核都市の日食

奥廊に佇む戦争濡れしまま

1998.07

漱石読みさしてクレゾール匂う待合室

天心より慟哭 睡魔来る来る

剃毛や降る雪より密かに初音

鳥雲に透明な存在の重さかな

痔の痛む季 モモンガは消えました

顔尖らす雪夜モノクロの刑場

太古の風吹く不眠の街

身体という殻だ重い

メス化する社会、オス化する女房族

ときどきキレル生徒、毎日キレル教師

麗しき傾斜廃屋初日の出

離人症の足裏疼く夏木立

片袖たり背広まぶしき小春譚

仏具屋の灯りさやけし主おぼろ

不器用に塗られし壁の心電図

箱庭を肥やして老いたりわが祖国

透明な存在確と汝が重さ

青嵐軍靴は未生か無知なるか

生ぬるき風の隠語モザイク都市

腫物も手淫も神への反歌とす

子の性の奥に雪崩るる吾が五色

空蝉や死ねば死に切り千恵子抄

玉音を微かに聞かば声明なり

牡丹雪ゆらぎゆらぎて死を呑めり

遠雷を引き寄せ厭う人造湖

園を出で未決囚となる単性花

詠む勿れ白夜は蛇を誘わん

わが肉こそ不気味の極み冬の虹

おぼろ雲小人連なる夢浅し

1998.06

春雨に詩(うた)い出す肉(しし)ままならず

うっとり階段きしむ春の耳

天女の裾めくれ石室の大和うた

若い頃「赤い糸」/老いて「くされ縁」/死んで「因縁」

1998.05

北向きの厨に女昇天する

太古の風ゆらぎ不眠の街灯

青草に眠るナイフの体温

昭和駆け抜けて樟脳匂う

終らない日常を微分する

秋の玉てのひらに一日足る

1998.04

うつし世を水平に泳ぎ垂直に逝く

公的資金の私的導入

1998.03

秒針逆進ミサ二OOO年の井戸

梅ほころび元気な人から逝く

冬迷走 首から雷管抜こうか

雪わだち湯気上げてる残像

春風あの扉の重さが巡礼する

さえざえ雪ふる博士の欲情

透明な存在の重さよ

受験戦争できる平和な国

それなりが見えない若者/それなりに生きられない中年/それなりを死んでいく老人

1998.02

不器用にぬられた塗り壁の心音

体育館も足音も丸ごと暮れ落ちる

人生は美しい虹の放物線でありたい

寄らば大樹が倒れる

1998.01

背広の片袖落ちた麗しき男

頭上に男根 足裏の女陰 近未来から

足跡が歪んでいく旅路の夕日

生徒(こ)から生徒(こ)へ口移し無声音

子の性の奥に山川草木 箱庭とて

椅子の脚みな切られおり職員室

煩いを止めて 流れてスネークダンス

半開きの社会の窓からシャローム神

頭上より男根のびる近未来

待降節俗世の迷いは迷いとし

草枕して信仰宣言(クレド)つぶやく四十肩

善悪の彼岸の山は葛折り

人知を超え先駆ける風のモノローグ

主は近し女座りに懺悔かな

喜び踊れバーチャルはリアリティより色濃くて

感謝と願いと祈りとの隙間を埋める万葉がな

生きがいを積み重ねて生きる意味

公然と撒かれたサリン/野放しにされたダイオキシン

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句1999年発表作品  

1999年12月

当局の思惑ビル風横なぐり

神経病み等圧線をなぞる蟻

1999.11

遠く近く鳴くこおろぎ悠久を這う

晩夏狂人の叫びに答え無し

虫の音も風もある校庭のダイオキシン濃度

宵闇を背に重ねる推敲祈りなり

思い詰める一事のありて残暑厳し

気の上下に人生感の右往左往

夏ばてのまま秋の教壇へよろめく

ばてぎみに秋の蚊の交尾

とってもいい子で見てきたピカソ○□

ときに直ぐな心いただいて冬へ向う勇気

1999.10

抹殺したい朝の陽炎

命ひらく 海越え 意味を超え

1999.09

片言に片言答える春の宵

伸びゆく中指の先程あいまいに初夏の暮れ

凝縮する神イエス炎天を闊歩する

スリッパに陰毛貼りつく田園調布一番地

「意味」に追われた「実存」嘔吐する

創句は壮句、また復活する

1999.08

春雨に濡れた約束終電車

機械の腹透けて向うの花曇り

学校崩壊から学校解放へ

1999.07

年末めく週末ほろほろ紅雀

長老フランシス薄口醤油の奥に棲み

聖霊降る磁場寒しリニアカー

真鍮の把手を愛でる春の修辞学

句作(つく)りては加え狂気を加え桜桃忌

いつまでも待つ冬景色たじろがず

退屈過ぎて眠れない

「情報公開」で人生を閲覧できますか?

1999.06

裏目裏目に出るカード一枚が微笑

いつまでも把手(ノブ)のつかない春のドア

無駄なく生きて死に急ぐ

体が軋む心が軋む人生の音が聞こえるか?

(-)に(-)をかけて(+)になる人生の不思議

1999.05

微苦笑するニッポンの蒙古斑

半生を素因数分解してみる彼岸かな

透明の思考を馬上で受け止める

春分越え昼夜逆転の受験子で

三寒四温静かの海の水上スキー

桜暗く菜の花暗く知事喝采

不倫死体験

1999.04

合わせ鏡の奥へ奥へと水中花

一人は灯へ一人は闇へ非核都市

尿瓶に蝿たかる五十日毎のリストラ

骨になってまで他人と比較される

1999.03

夜が紡ぎ出す歌のみずおちに溜まるを

密やかに熱き決意よ太魔羅にかかる冬の虹

黒点に真向いコンドラチェフのたおやかな波

亀鳴いてモノローグにしかならない風の微笑

押されたり笑ったり闇の物証

一芸入学 腹芸出世

1999.02

善人に傷つけられ悪人に癒される

前半生を書き上げ後半生で推敲

千人の高笑いより一人の微笑

神の話から下の話までする教師

妻の言い分 夫の言い訳

長律短律波に揺られてひと日過ぐ

ニコチン・タールO・一汝ラ愛ニ励ムベシ

病気の効用は生の実感

1999.01

予定説 木立舞い上がる空を

腹上にてあるリフレインを仕込まれる

発汗する森 死者生者交わりて

捨てられぬ見栄や病や発酵す

今日一日を凌げば今日のドストエフスキー

人の振り見てわが振り合わす

椅子の脚みな切られおり業放課

どこかで見た顔だ極楽鳥のような男

刑場に非在尖らす雪夜かな

嘔吐する斜体の美学伊達男

目覚ましや針音ぶれる離人症

北向きの厨の春に妻痩せり

柄パンや脛の伸びゆく冬日差し

風に向く体位を試してかの文体

曇天や曖昧なメスを隠し持ち

冬ざれや未決囚の肩を鳥かすめ

天心の初音を聞けば睡魔来る

剃毛や降る雪よりも密かなれ

体育館丸ごと暮れ落つ足音も

草枕してクレドつぶやく三十路かな

雪解けの街よ今宵は自重する

人類やおとつい来やがれ機械論

人間不信三日目のトランポリン

春へややダイヤルずらし念仏講

秋の風手擦れた聖書(ほん)の浮遊感

手のひらに転がす魂(たま)の寒さかな

健康な人の言い訳聴聞す

空蝉の皮下体温を笑いおり

喫茶去や足裏白し冬の陣

悪意ある晩夏よ土鳩太りすぎ

わが抱くはわが墓標なり夏の陣

ピンポンのボールの速さ去年今年

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句2000年発表作品  

2000年12月

掲示板の書き込み疎ら敗戦忌

信仰語る友がないと言う友と語る秋の夜

2000.11

書き上げて崩落する枇杷の森

亡き師の声色よみがえる聖歌の波間

父の早い帰宅にロザリオ一環加える晩祷

日陰の葉は硬くもみじして読みさしの殉教史

聖書通読三回三男坊の誕生日

降るだけ降った空へ澄み渡るミサ答え

2000.10

贖罪や黄昏のネオン咆哮す

炬燵から出られぬ人参と歎異抄

面映ゆきデスマスクあり司祭館

鳴き競う虫の音アッバ南無アッバ

辺境や右脳に跳ねる山羊の群

虹かかる生死を渡るイエスかな

灯台へ長い橋揺れ蟻地獄

草叢に錆びゆく車輪逃避行

草原に死臭漂う鉄扉の間

雪明かり青き唸りは何処より

雪道を来て雪に帰る神の人

春昼やエーテルに酔う小人かな

死者に告ぐ雷鳴一つ古戦場

四十半ばの重さ軽さやのど渇く

吾れ衰え彼の人栄えアヴェ・マリア

観念的なる凡庸なる学生服百人

火葬場より発す生(せい)の通低音

火事もなく蜃気楼もなく少年跳ぶ

茜さす肩麗しき小便器

テオフィロと聴く福音や秋の風

枕辺に白いぬくもりイエスかな

モノローグより悲しい夜の携帯

2000.09

花に四月の体温 風にフラミンゴ

腹出てきたよ夏の北回帰線

不況下どしゃぶりの晴れ間に咲いた一輪

闇夜であれば音が見え色が聞こえる

ピアノの森を抜け休止符を忘れた右脳

あじさい悲しく枯れ鋭角の来光

2000.08

脚から醒め半眼で見た鶴の夢

山仰ぐ髭面に黄砂降り止まず

2000.07

緑陰の導管しずか壮年期

陽炎に揺れる花電車五月晴れ

薄明りが好き猫属の越冬

松籟に振り向く駝鳥涼しき宇宙

犬の眼で見つめる秋のさざ波

闇夜に温き風の措辞 微笑

2000.06

春、青い絵ばかり描いている少女

血が化するイエスの指に掠められ

2000.05

逡巡し<コギト>に戻る寒さかな

流木の如き闇夜を拝領す

螺旋状に赴く神も太宰さん

浮雲や気掛かりそれはそれとして

日溜まりの負圧に男眩暈かな

等身大に納まる肉を持て余す

屠場いま三界傾ぐホーホケキョ

店頭に虫干しされたる聖時間

天国へ鳥語人語を解き放ち

天を突く手や足数多第九聴く

帯電し青白きミイラ帰還せり

雪女一髪燃えて魂(たま)灯る

人知れず咲く喜びや日々草

蕉翁とイエス貫く風さやか

縦書きに戻る思想や桜桃忌

思わずも我ここにいるデカルト

黒ミサを終え双丘に月のぼる

逆しまに重力と恩寵ヒキガエル

衛星へ仕送りしたき紅葉狩る

雨脚を微分して泣くダビデ

羽虫逝き木霊を溶かし春の風

異次元の夕日へ傾ぐ都市空間

わが病歴簿(カルテ)盗み見て去る冬の暮れ

ポケットへ鬼押し込んでランナーズ・ハイ

あれこれ捨て身震う義兄の年の暮れ

神にいろいろな遊び冬枯れの風紋

鬱もなく躁もなく枯れて夕焼け

切られては笑う竹天風さやか

晴れのち曇り曙光なみなみ寄せ

譲り葉の思想剥落春霞

闇に曳くレールに傾ぐ彼岸花

2000.04

秋深き午前一時縄文の風

しまい忘れた風鈴へ三寒四温

2000.03

風止まるハンドルのないバイク

白い河床に跳ね返る命の量感

泣き止んだ月浴びて帰る

汽笛に震える窓や暁の嗚咽

うつらうつら鳥影そして疾風

イエス静かに歩む篠懸の森

2000.02

風去りぬまた一つ季が動く

ゆずり葉いつもどこか病んでいる

2000.01

冬瓜煮ても焼いてもボーナス減

人の思いをこえて救いはユダの冬

神を待つ木が季を待つように

心の振り子止まず青年立待岬へ

やすやすと信じられる日もある秋の星影

キンギョ逝く水は致死量の透明度

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句2001年発表作品  

2001年11月

妬み持つ蛇の誘い秋の夢

文字化けのパソコン愛(かな)し夏の闇

犬の眼で見つめる秋の波紋かな

世の意味を問うには暗き雷雨前

山仰ぐ鶴に黄砂降り止まず

蛇を飼う妻の白髪の増えしこと

冬景色から少女ひとり剥落す

低く飛ぶ海鳥の目の幼かり

晩年と思う夕陽や日々草

はにかむので見つめてしまう夏野かな

遠花火卑弥呼の郭(まち)に小雨降る

伝説へ棚引く雲やみずすまし

手帳から父の記録の失せし朝

知恵の実の如く林檎磨かれし

小さき死また一つ経てひと日過ぐ

抱き抱かれ裏表のない夏布団

清貧という遊行流行る世紀末

神経病む白くて長い腕の少女

死を語るほどロマンチックな春の宵 

産着の如死装束を着ていたり

サムシング・グレイト寒き街角に

五月雨にボール追う子のせな背(せな)光り

草笛に振り向く駝鳥目を細む

果実皆熟れゆく空へ少女降る

陽炎に揺れる無音の花電車

書き急ぐドストエフスキーの猛暑かな

カインの裔の暑背負いて鎌を研ぐ

異邦人こぞりて夏の涙かな

飽かず見る無名の街の茜雲

蒼白き夜のとばりの果て見えず

聖櫃に真向かう祈りが夏の冷たい手

2001.09

夢高く居眠り難き花水木

珈琲甘く入れ咲き初めし紫陽花の白さ

2001.08

命疲れ春宵に酌む赤ワイン

静かに暮れる日曜のバイエル

2001.07

夕暮れは風が出てきて春へ向かう庭

暮れ時の青さがうれしい紫陽花

暮れればしのぎやすいアンダンテ

静かな水面が誘う老人たち子供たち

叱られてなお陽のある夕べ

ここ二三日暑くなって日陰をつくる楓

2001.06

花のない木を風が揺らす木の影

風、美しく咲いてもの言わぬ

2001.05

夕陽に溶ける森 秘書が呼ぶ

悲しい風も三寒四温

諦め切れぬ思い見上げれば快晴

春の風が夜を待って強くなる

一日が雨の、向うの曲がり角

ちらつき止みちらつき飽かず春の雪

2001.04

原野に佇つ都市のささくれた夕日

車音近づけば虫の音遠退く

2001.03

卵かけご飯おかわり!竹の春

霧笛冴え渡る北窓開けて一服

書斎の戸は細く開けておく一日に読点

闇は無限大追伸長くなる

マタイ伝開く左右の手の温度差

コーヒー飲み干して闇の彼方のブラックホール

もう傷は癒えた月の満ち欠け

夕立雷鳴午後三時の時祷

眠れるだけ寝る祝日の雨

北向きの書斎で書き上げる武蔵野連作

前に虫の音うしろに遠雷

神の道具となれ吾が喜びとなれ

止められぬ煙草ふかして今日も好日

仕事一つ上げた自信で地に踏ん張る

降り止んで虫の音が戻る教会の庭

雨の日の香薫いて長い晩祷

ミサ後の聖堂一人ロザリオ

ふと目覚めて生死のことなどまた寝入る

バイトから帰った長男の背丈また少し伸びたような

ステンドグラス雷光に映えミサ粛々

2001.02

秋雨が夜のしじまを深くする門灯

風冷たく銃声こだまする

2001.01

生活の音カラコロさせて夫する

年の瀬迫る都市の長い顔

行として四百字が重い勤労感謝

祈りを忘れていた虚無が手のひらにある

希望失いかけて休日暮れる

どんより冬へ向う空へ歌ミサ

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句2002年発表作品  

2002年12月

雷鳴聞く湯船に復活疑わず

辺境の月こそ光れ世の闇へ

花愛でる心は捨てず捨聖

出さぬまま褪せしハガキや酷暑病む

信仰とはたとえばレット・イット・ビー

狡猾なアガペに秋蝶身をゆだね

九・一の不安と希望神無月

2002.11

梅雨寒に救いの揺らぐ床の中

わが重荷の重荷とぞ秋の風

職業的笑い麗し死出の旅

算数を叱られてなお夏の雲

祭壇の隙間涼しき嗤いかな

暑さを言いドラマツルギー始まりぬ

会うてさて話す事なし聖母祭

2002.10

台風の目を突き鳥ら昇天す

秋深し空き箱ひとつ禅語めく

多発テロ葡萄の重さ手に余る

不定愁訴来てまたヨブ記読まんかな

一坪の驟雨の向こうの厠かな

神経の揺れ止まず冬止まりける

夕刻の寝覚め淋しき冬の窓

告解の列に背骨の軋みおり

気弱なる背骨伸ばして小春かな

無頼派の文体乱る初日記

キリストの爪先に吹く風温し

永遠(とわ)なれば待つことも無し冬の窓

和せぬまま別れし雲の速さかな

御言葉を紅葉に結ぶ風の家

主にゆだね死に切る祈り冬の月

苦も死をも救いの縁と為せし主よ

諦めも神の記憶にある晩夏

ゴルゴタの丘に焼きつく春の影

わが生の文体歪む春の月

音楽のように小言を聞いている

もう妥協しない五十へ春の河

喪服美人梅雨の晴れ間を漕ぐペダル

ボロ切れの如く夏猫昇天す

万象やキリストへ向く夏の空

晩秋の椅子の体温賜りぬ

春疲れ人名録の吾が名かな

神学論書き終え愛欲昂まりぬ

2002.07

無機物の笑いは永遠(とわ)に春日中

諦観や飲み屋の先の温き坂

2002.06

節煙を決めて冬至かぼちゃかな

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句2003年全作品  

2003年12月

雪掻きて座す共食の五千人

年越やヨハネの首を盆にのせ

信頼の生みし奇跡や暮れ易し

春泥に足とられては殉教す

残雪に甍刻々洗われつ

苦しみの神秘に触れて枯野果つ

凍て空に母の口癖聞くばかり

2003.11

病み臥せば神に直れと時雨かな

迷いなく御国を目指し鳥渡る

毒麦を抜かれて軽き花野かな

人生に無駄なし御国の種と化す

御絵配らん公教育の隙間風

疑問符に思い入れある月夜かな

生きる意味問う青年と冬の窓

2003.10

平らかに死を願う朝花曇り

癒えぬまま秋夕暮れを主と泣きぬ

道なき道を神は備えし秋の暮

怒気含む眼に映る秋の雲

天国の門を狭めし繁茂かな

従順の果ての十字架秋の空

山川の祈れる姿や秋晴れる

三度秋イエスの夢に癒されし

去る友も来る友もいてロザリオ

一日に山あり谷あり萩の花

一茶集声出して読むそぞろ寒

ルサンチマン深き彼方を秋に問う

ままならぬゆえに御旨と知れる月

花傾ぐ広野は視姦というべきか

天使祭カミヨアンタガシュヤクデス

誓わずにおれぬ弱さや戻り寒

正義とは休らうことよ秋深む

少しずつ節制少しずつ蜜柑

十一桁の指名手配書とは如何に

寒空に掘り出す夫婦茶碗かな

秋晴れに戸板浮かべし死出の旅

晩秋の自我もて余す狐かな

我が内の荒れ野に降りぬ木の葉髪

冬めきて立ち現れぬ神の顔

百穴ヨナのしるしの風さやぐ

微妙だね使命の在処秋の暮

晩秋の自我もて余す狐かな

軒下に一所賜わるすみれかな

主の御手にコスモス摘まれ花盛り

2003.09

我よりも我を知るべし冬の神

吾が生こそ御業の場なり冬麗

御言葉を結びし小枝枯れてなお

万象に神の業立つ小春かな

花咲き継ぎ人生き継ぎて神の業

はずせない仕事抱えて秋の暮

千歳飴いただき神に弟子入りす

2003.08

正邪なく遍く吹かれ神渡し

咲きつぐやコスモス風に揺れ止まず

月白き明け方に見る恐い夢

病む程にブドウの枝の軒近く

共食いの最後の一尾夏の海

信頼こそ神の業なり秋の蝶

秋の日の戸板に運ぶわが身かな

2003.07

言うべきを言うて別れし友の秋

イエスてふ戸板に乗って流されたい

長き夜の夢に押されて発つヨセフ

友は去りカナンを去りて後の月

無辺なる神の記憶に安らぎぬ

神共に在(いま)せば蒼し秋の空

共食いの金魚の水の透明度

2003.06

異端とは何ぞとロムる秋の夜

冬枯れの舌点々と門の外

イエスというモノに触れたし昼下がり

秋雨にさきたま煙ることもあり

外灯に群れることなし冬の蝶

言わずもがな図書館晩秋咆哮す

正統を名乗る人いて秋寒し

父の輪に立つ十字架や秋果てる

あばら骨門地無用の主の救い

イエス様も乗っていなさる遠足バス

この秋を晩年と思う在所かな

冬へ向く雑魚の目数多憂いなし

定型に盛るキリストや秋歪む

冬日さす図書館銀河の一点へ

生温き炬燵に刺さる楔文字

校舎から言霊吊し眠い秋

携帯や昨日の話は明日のため

雲飛ばす秋風深き憂い持つ

赤い羽根床に貼り付く多発テロ

系図ごと背負いて御国へ秋の空

春愁や生きるはキリスト死ぬは益

人生の帳尻如何に復活祭

生けるものすべて春野に抱かるべし

炎天に奇跡の水を呑みて佇つ

重吉の秋に会うてか老い易し

春一番吹きて自画像恐るべし

日陰こそ年々歳々ニラの花

2003.05

人生にテキストありや四谷駅

如何にても祈り聞かるる春霞

逃げ水を追うて迷いし羊かな

不安もて祈りに誘う神の春

寒戻る祈りの果実疑わず

わが身にも御業成るべし春の風

暮れてなお優柔不断春の海

2003.04

人日やわが半生を悔やみ居て

暖冬の顔こそ似やる番いかな

密かにも奇跡を刻む初時雨

東風吹かばとりどりの花祈り合う

ミサ毎に蕾やわらぐ桜かな

寒鯉の欠伸に出ずる銀貨かな

どこまでもゆるされて雲風に乗る

2003.03

実のなる木ならぬ木もよし冬に入る

コスモスは風に揺られるために咲く

裏を見せ木の葉大地に温もりぬ

秋の地に立つあの方へ続く地に

美しく泣く人でした死者の月

十字架の横木に休む目白かな

死後三日ポロンと鳴りし冬のギター

2003.02

狭き門めざすが如く鳥渡る

新しき神話を孕み星月夜

秋の風水面にガダラの悪魔憑き

生涯即奇跡なりけり蔦紅葉

神の使徒コスモス風に揺れ止まず

無口なる秋の番いや日に一卵

巧妙に無名の神は虹立てり

2003.01

我が内に我が牧者あり秋の暮

仲秋の不信に浸る右脳かな

天国へ逆さに実る石榴かな

讃美歌に流され午前三時の牛丼

残菊に神を見る目の妬ましき

犬の目にうつばりはなし秋の空

生くるにも死にも時あり穴まどい

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 0

平田栄一求道俳句2004年全作品  

2004年12月

生徒(こ)らと編む薄き句集や更衣

神に書く物語とて遠花火

悲しみを通低音に初夏の夜

聖書繰る指汗ばみて信徒使徒

吾が生を福音書に入れ夏安居

ラジウムの如き新約傍らに

夏の川余さず海へそそぎ切る

時の日の丘の花々ただ眠し

死は生の完成という師の晩夏

憂きことも死支度とてヨハネ祭

福音に世界は抱かる初嵐

梅雨入りやムンクの叫び我にあり

死に切るは生き切ることぞえごの花

2004.11

鳩下る水面きらめき父子の契

ただ生きて死ぬがよろしと虫の秋

万緑や抜歯の予後に亡母を見ゆ

譲り葉の散りて人生無駄は無し

狂女踏む梅雨の晴れ間のわが草履

眼鏡落つ我が顔憎し夏水面

さっぱりと句心尽きて麦の秋

いつの間に梅雨あけ無常優しかる

青嵐切った張ったで老いを打つ

青嵐昨日を明日に繋ぐ今日

親不知痛みて近き神の里

首切りによき雨降るか夏休み

繰り返し一句噛みしめ虫歯の日

教会史読み継ぐ夏へ勇気もて

祈りては倦んでただ祈りの姿勢

ひと言がひと日の糧に人の春

母の日に妻の小言の多かりき

男気や死んで久しき夏籠もり

疼痛や梅雨の走りの雲厚く

バード・デー雨のち曇り午後会議

転入生振り向く階段立夏かな

梅雨走り切符きられし小猫かな

A型の心配性が夏の湖

2004.10

無信者の信に鼓舞され聖母月

人の子の肉を食らいて今朝の夏

肉落ちて目覚め早まる春の月

麗らかに最低体重記録せり

無常という神の身体に触れなんと

手放せば春も命も帰郷せり

黄梅や五十に近き妬心かな

2004.09

わが信は銀河を流る戸板なり

亡き人の首しめ悔やむ春の夢

さめていく心のままに青き踏む

腰据える覚悟にわかに椿落つ

哀しみの果てに落ち葉舞い上がり

乳母よりも教訓めきて雨の春

閏年二月晦日を言祝ぎぬ

2004.08

年の暮獄中書簡に改行なし

十字架に二拍一礼初御空

自爆テロ続く夏夜のイデア論

酔い覚めの夜明けに沈む三日かな

推敲ややがて祈りに春夕焼

箴言を憎みて去りぬ春の影

気がかりを預けて溶けよ春の雲

2004.07

旅枕とある葬儀にまぎれなん

死を想う目方の軽さ春霞

孤にあらずただ悲しくて花見かな

狂人や曇天仰ぐ冬しずか

ピエル神父小さな旅の春朝餉

日々絶版年々増刷神の空

第三楽章まで来て冬の陣

絶版やぬかるみ歩む木の芽時

聖書のごと重吉を読む日永かな

神無月神を忘れて病み呆け

秋空に溶けし命や主の福音

御言葉の裏に廻りしバッタかな

異動覧飽かず人生収支よみ

吾が痛み主の痛みと化す時雨かな

ネットから遠ざかりては冬に入る

サイレントちらちら師走を推敲す

置物として飼うがよし秋の猫

イェス様のお顔お顔と年の暮

イエスマリアヨゼフよろしく秋の旅

アッバミサ出版許可を受けし日に

旅心にわか霧降霧の中

聖母祭ひねもす雨は世を濡らし

恥と死と晩夏せめて燃えてたし

十字架に柏手打てば冷夏かな

往路不安復路福音たずさえて

雨脚が気になるミサへ瘤つけて

秋猫に御言葉学ぶ風の中

2004.06

柏手を打てる高さに磔刑図

冷房車気の昇降を計りおり

ともかくも今日という日が残照に

手に負えぬカイロス迫り草茂る

十字架の重さ軽さや梅雨近し

宗教的腕立て伏せや五月闇

神の筆なる夕焼けを梅雨の晴れ

2004.05

砂浜に汝が名は消えず青葉木菟

逃げ隠れするも預言の成就かな

すさまじき系図を抜けて五月晴

降誕や天地を御子が縫合す

郭公も御身の肉のうちにあり

アバ・イエス再洗礼の雷雨かな

明日はあす今日はきょうとや夏雲雀

2004.04

嘘から出た誠しずかに春の暮

信不信問わず御国へ春の丘

友なる神共にいます春の闇

神そっと身体を起こす春の朝

先立つ神ありて迷わず春の道

五月闇虫めがねで読む『死の神秘』

「これでいい」と死ねる人あり鰯雲

2004.03

書架巡礼五月半ばの言霊よ

沈黙や神の記憶に百合一輪

ユダ知るや洗足の夜の帚星

嘆くとも悔やむともよし春に死す

アリマタヤ春の屍アリガタク

七分咲き三分咲きにて枯れる花

春もみじワイド文庫に帯は無し

2004.02

速読する『遅読のすすめ』木の芽時

清明の頃との説や主の晩餐

菜の花や微熱持ちたる耶蘇の墓

曳かれゆく牛の目の如朧月

春着縫う愚者にやさしき因果律

魔の山の細部の神に虫めがね

破かれしユダのページに牡丹落つ

弟子が師に躓く蛙目借時

青嵐ムナシクルシと吹きまくる

人生や無駄なく春を備えたり

身に近く二十六穴ノートかな

証書授与雨音呼名子守歌

春愁や陥落跡にユダの金

春雨にデュナミス効くかクラス替え

春一番イコンに右脳洗われて

十字架の下に苦楽を蝶結び

月を背負い喘ぐ痩身幹事長

咳払いする便器ひとつ春野かな

花冷えを屠場に曳かる愛の人

トニックの瓶底光り御子いまし

先になり後になり来る初便り

去年今年貫くコンビニ弁当よ

四日ともなりてにわかに夜と霧

日々死んで日々よみがえり去年今年

捨て石こそ親石となり春隣

あらぬ時あらぬ所に福寿草

青空に抱かれて咲くよ崖の百合

2004.01

平らかに死を希うては冬の闇

日に一句遺書改めし冬枕

わが弱き肉にも宿るコトバかな

四千人神を食らいし春の山

弱さをも岩となすなり冬の虹

日々ありて十字架親し年の暮

終末のしるし鮮やか冬紅葉

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 1

平田栄一求道俳句2005年全作品  

2005年5月

万物に寄り添う影や冬ぬくし

生活即人生となれ冬鴎

ケンケンと雉の鳴きたる城の址

雉青し蒼き御空に溶けなんと

薄日さす秋の惑いのマタイ伝

蟻一尾迷うこと無し神の家

秋空へ想い描けや主の御顔

2005.04

長雨に耳立てて待つ便りかな

正論を吐くは易しき秋の雲

死は生の完成なりや冬真近

枯枝や積まれしままに絵となりぬ

お恵みは先取りできぬ秋は秋

赤光に霞む生死の果てなれば

『自叙伝』の手擦れ愛しきテレジア

2005.03

老いてなおこつこつ励め穴惑い

密猟のごとく季(とき)狩るミカエル祭

匿名のネット社会や四季も無し

同窓の面影と和す秋ひと夜

同窓の三十年後も同じ秋

沈黙を楽しめる程秋の雨

生き切るは死に切ることぞえごの花

身の丈の目標はある神渡し

秋雨やしとる初稿に朱を入れん

祭壇に名も無き花をテレジア忌

混信する夢の続きや秋未明

吾が性の愛し憎しや天使祭

句友なき句作つづけて秋闌ける

救われてなお道はるか秋の雲

老醜の気配青北風有無言わず

母の顔知らぬ子となり秋の風

タンポポになりたい風に吹かれたい

単位制生徒(こ)ら黙々と秋雨へ

秋分や神の国への回帰線

霧深き足元しかと見えにけり

綿虫にある星雲の記憶かな

星芒に吾が生死あり冬構

星屑を集めて成りしアダムかな

難病を得てなお笑むよ秋の猫

長き夜の吐息の如き放屁かな

テレジアの信にまなびて冬に入る

虚言癖誘う恋や文化の日

イボ撫でて老醜憎む秋鏡

秋深し校門に来る欝の影

『人間の絆』読みさし秋を病む

2005.02

我が性(さが)も春野の花の一つなり

親族に醜聞ありや鰯雲

児を置いて嫁去る家や居待月

幸不幸どこに分かれ目秋の虹

怒りても詮なきことよ秋過ぐる

あらぬこと口走り居る冬便所

あきらめの詩形に秋の希いあり

2005.01

光さす無風の秋を母祈る

晩秋の風をくぐりて悪夢かな

薔薇すみれタンポポも良し天の庭

白き戸を開け放ちては母祈る

白壁に二百十日の光湧く

かくひと日終わりて御顔見て閉じぬ

オレオレと急かす心や秋の雨

category: 平田栄一求道詩歌(2)

tb: 0   cm: 3

求道詩歌誌「余白の風」

南無アッバの集い&平田講座

最後の南無アッバミサ

全記事表示リンク

カテゴリ

▲ Pagetop